劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)が降って来る」

作/福冨英玄

<1 始まり>

 

明転するとそこはとあるマンションの一室。

漫画家、野村ハルコの住居兼仕事場である。

ハルコ登場ずいぶん酔っている様子。

遅れて担当の山崎氏登場

 

ハルコ たらーいまーっと。なんら?ずいぶん暗いろ?

山崎 電気、電気…と。ああハルコさん、そっち壁!

 

ハルコ、壁に頭突きを入れて、こける

 

ハルコ やーい、こけてやんのー、ザマーミロー

山崎 (起こしながら)もう、だからそんなに飲むなって言ったのに…。

ハルコ なんらと、あらひが酔ってるってか?

山崎 十分酔ってるでしょうが。

ハルコ へっへっへっ 黙ってたけろなー、実はあらひは全然酔ってないのらー。

 

ハルコ、そのまま床に寝転ぶ。

 

山崎 ちょっと、ハルコさん、そんなとこで寝ると風邪ひきますよ。

ハルコ あれー、やまらきさんが二人もいるー。

山崎 …ま、とにかく明日また来ますから、ちゃんと着替えてベッドで寝てくださいよ。

あ、それと…必要ないかもしれないけど、最終話のビデオ、

一応置いておきますから。

ハルコ やーまーらーきさん、一緒に寝よっかー

山崎 な…何を言い出すんですか。

ハルコ どもってやんのー。やまらきさんのすけべー

山崎 …とにかく、今夜はもう飲まないこと。

それから僕が出てったら、ちゃんとカギかけて寝ること、いいですね。

 

山崎、部屋を出る。

ハルコ起き上がると、冷蔵庫から缶ビールを取ってくる。

 

ハルコ 人間ってのはねー、やるなって言われるとやりたくなるんだなーこれが。

 

ハルコ、ビールを空け、一口飲んでから

山崎が置いていったテープを手に取る。

 

ハルコ あははー、廃刊打ち切りだって、笑っちゃうよねー。

信じられる?私ってば失業ぶっこいちゃったのよね。

 

再び、寝転ぶ。

 

ハルコ あーあ、最終回描きたかったな。あと一回で最終回だったのになー。

そしたらさ、そしたら私、あんたたちのこと

好きになれたかもしれないのになー。

 

テープをほうり出す。

 

ハルコ 最終回はねー、私のオリジナルなんだぞー。

山崎さんが好きに描いていいって言ったもんね。

私の最終回はねー…私の最終回は…。

 

眠りに落ちるハルコ。

以降ハルコの空想もしくは夢。

レッド・ブルー・シルバー悲鳴とともに飛び込んでくる。

注 強烈なダメージを受けると変身が解けるのは戦隊もののお約束。

 

ブルー ダメだ、地球衝突までもう時間がねえ。どうするレッド。

声 どうにもならん。

 

悪の帝王、カイザーデウス登場

 

デウス 地球は砕け散るのだ。この私の引き裂かれたプライドと共に消滅するのだ。

レッド 何を!

デウス 立て!プラズマン。立ってこの私と戦え!

もはや何も欲しくない。この瞬間が全てだ。

 

ゆっくりと立ち上がるレッド。

 

レッド  ブルー…シルバーを…いや、リンをつれて逃げろ。

 

見ればシルバーは入ってきて以来ピクリともしない。

シルバーを抱き起こすブルー

 

レッド  デウス!おまえの挑戦、この俺が受けて立つ!

ブルー レッド?

レッド 心配するな。方法はある。

 

向かい合うレッドとデウス。

 

ブルー …レッド、死ぬなよ。

レッド  …約束する。

 

ブルー、シルバーを連れて去る。

残される二人。

 

デウス  勝てると思っているのか?

レッド  無理だろうな。

デウス  ならばなぜ一人残った。仲間を逃がしても地球が消滅してしまえば同じことだ

レッド  デウス…俺は勝てないかもしれない。そして俺は死ぬかもしれない。

だがこれだけはいえる。この地球は俺が守ってみせる。

たとえこの命に代えても。

 

レッド、変身ブレスを引きちぎる。

 

デウス !貴様!残りのエネルギーを!

レッド  いくぞデウス。これが俺の最後の力だ!

ハルコ うるさーーーーーい!

レッド・デウス  え?

 

ハルコ、いつの間にか起きている。

目が合う三人。

この瞬間、現実と空想が間抜けに交差する。

 

ハルコ 静かにしなさい。

 

再び寝るハルコ。

 

 

 

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