劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)は降って来る」

作/福冨英玄

<3 次元断層>

 

 

ヤマザキ登場。

タイムカードを押したりしている。

通りかかる局員女。



女 あら、今帰還?

ヤマザキ あ?あぁ。

女 大変だったみたいね。

ヤマザキ 大変も何も…現地民が一匹歪曲空間にけつまずいただけさ。

あおり食って二、三人いなくなってたってだけ。

そのくらい現地で処理しろっての。

何も中央が出張ることないんだよ。

女 ご苦労さま。

ヤマザキ 全く・・・でさ…ご苦労ついでに、今夜どう?

女 そうね…私はいいけど。

ヤマザキ マジ?

女 あなたはマズいんじゃないの?

ヤマザキ …なんで?

女 次の仕事、もう来てるわよ。

ヤマザキ …マジ?

女 帰還報告はもう出したんでしょ。そろそろ…。

 

と電話の呼び出し音。

 

女 …というわけだから。おあいにく。

ヤマザキ あ、ちょっと…。

 

女、去る。

ヤマザキ、しかたなく電話を取る。

 

ヤマザキ もしもし!

 

電話の相手は課長だったり。

 

課長  おはようヤマザキ君。報告書は届いたよ。

いつもながら見事な手際だね。さて、今回の指令だが…

ヤマザキ ちょっと、課長…何スパイものやってんですか?

課長 最近凝ってるんだ。ヒーローものの原点だぞ。

…さて今回の指令だが…。

ヤマザキ お言葉ですけどね。俺たった今戻ってきたところで、

まだ装備も解いてないんですけど?

課長 …今回の指令だが。

ヤマザキ ちょっと!…音楽ストップ!…冗談じゃないですよ。

もう仕事ってことはないでしょ?

今帰ってきたばっかりだってのに!

課長 話は最後まで聞け。指令というのは他でもない。

三次元空間に昨夜から次元断層が生じている。

断層源はどうも現地人らしいんだが、

これがなかなか侮れない大きさでね。

現実界にも具体的影響が出ているかもしれない。

現地の局員が対応にあたっているのだが、

どうも手際が悪くてな。そこで…。

ヤマザキ 俺に手伝えっていうんですか?

課長 いや…これを渡して欲しい。

 

課長、ファイルを出す。

 

ヤマザキ それは?

課長 この事件に関するデータファイルだ。

中央のシステムで調べた情報が自動的に

送られるようになっている。

これを届けて欲しい。あとは現地がなんとかするだろう。

ヤマザキ 届けるだけでいいんですか?

課長 うん。

ヤマザキ 他のヤツに頼んでくださいよ1

課長 だってお前が一番運び屋って感じがするから…ってのは冗談だ。

まさかとは思うが、もし現地で何かあったときには

君の手を借りたいのでね。

ま、一応、派遣員ということで一つ…。

ヤマザキ …何もないときは何もしなくていいんですね?

課長 もちろん。

ヤマザキ …わかりましたよ。やりますよ。

そのかわり、ちゃんとノルマの内に入れてくださいよ。

課長  いいだろう。ではファイルを転送する。

 

課長、ファイルをヤマザキに投げる。

 

ヤマザキ 便利な世の中になったなあ。

課長 お約束だよ、君。あ、ファイルは現地で見てくれたまえ。

ヤマザキ …まさか、このテープは自動的に消滅するっていうんじゃ

ないでしょうね。

 

間。

 

ヤマザキ 黙るなよ!

課長 健闘を祈るよ、ヤマザキ君。

ヤマザキ あの、ちょっと…もしもーし…。

 

電話切れる。

 

ヤマザキ (フロッピーを見ながら)…まったく

…あれで八次元神霊だって言うんだからなぁ…。

 

ヤマザキ、携帯電話をかけなおす。

 

ヤマザキ  もしもし経理?ヤマザキです。

ただいまより三次元に行きますんで…いや…

そんなこと言ったって…私だって行きたくて行くんじゃ

ないんですから…はい…はい…そんじゃ出張手当は

長期で頼みますよ。

 

切る。

 

 

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