劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)は降って来る」

作/福冨英玄

<11 ヒーロー>

 

 

ヤマザキ …とにかく緊急事態なんですよ!…惑星霊の誰かに

手すきはいないんですか?…いやそりゃわかってますよ。

下手に介入すればどうなるかってことくらい。

でも、このままほっといたら、取り返しがつきませんよ!

いいんですか?そうなっても…何とかなるなら

何とかしてますって!何ともならないから

SOS出してるんです!…そんな悠長なこと言ってる暇

ないんですってば…ちょっと…


電話切れる。

 

シルバー どうだった?

ヤマザキ ダメだ、相手にしてもらえない。

ブルー なんとかならないのかよ。

ヤマザキ なるならやってる!

レッド 他に方法はないのか?

ヤマザキ …残り二人の居場所がわからんことには…


と、そこへ通りかかるイカたち。

 

イカ男 …まったく、こんなカッコで酒屋などいけるか…あ!お前ら!

レッド イカ男、デウスの居場所をしらないか?

イカ男 ふん、貴様らが出てきたマンションの屋上だと誰が教える!

レッド 俺たちがでてきたマンションの屋上らしい。

ブルー …ってことは、ハルコん家の屋上か?

シルバー 灯台下暗しってヤツね。

イカ男 しまったぁ…

イカ女 何やってんのよ!

レッド ハルコも一緒にいるのか?

イカ男 う…バカめ。同じ手にひっかかるか!

レッド バカはお前だ。それじゃ一緒にいると言っているような

ものだろうが。

イカ男 どうしてわかった?

レッド やっぱり一緒にいるらしい。

ブルー なるほど。

シルバー 誘導尋問ってヤツね。

イカ男 しまったぁ…。

レッド ヤマザキさん、これなら。

ヤマザキ ああ、まだ間に合うかもしれん。

レッド ようし、行くぜ!みんな!

イカ男 行かせるか!こうなりゃ力づくだ。

三人 望むところよ!

 

プラズマンのハイキックから始まる戦闘シーン。

もちろんイカたちが負ける。

レッドたち駆け去る。



このあたりのシーンをデウス屋上から見ている。

イカたち起き上がる。

 

イカ男 くそ、このままですませてたまるか!追うぞ、イカ女!

イカ女 おう!

 

と、デウスなにやら念を送る。

イカたち、棒立ちになる。

 

デウス …もういい…お前たちの役目は終わりだ…失せろ。

 

失せるイカたち。

と、そのシーンを見ていたハルコが出てくる。

 

ハルコ どういうこと?

デウス 何のことだ?

ハルコ とぼけないでしょ。今の私に不可能はないんだから。

…何でプラズマンを助けるの?

デウス 助けたのではない。…利用するのだ。

ハルコ え?

デウス お前は、私というキャラクターを取り違えている。

…地球を支配するのはこの私だ。お前がやっているのは、

私がやるべきことだ。その役をお前にくれてやるわけには

いかん。

ハルコ …本気で言ってるの?

デウス 無論。

ハルコ あたしに逆らうの?

デウス たとえ神に逆らってもだ!

 

 

***

 

 

レッドたち、マンション1階に着く。

ブルー、エレベーターのボタンを押すが…

 

ブルー あれっ(ボタンを何度も押す)

レッド どうした?

ブルー 動かない。…故障してやがる。

レッド 階段だ!

 

 

***



ハルコ ムダよ。そんなことしたって、どうにもならないわ。

地球は消滅するのよ。

デウス 「この私の引き裂かれたプライドと共に」か?

ハルコ !

デウス 私のセリフだ。お前には不似合いだ。

ハルコ …

デウス …もうすぐやつらが来る。

ハルコ 来ないわよ。

デウス 来る!

ハルコ 来ない!私が来ないって言ったら絶対に来ない!


***

 

階段を上る4人だが…

 

シルバー どうなってんの?もうかなり登ったのに…。

ブルー 何で屋上に着かないんだよ。

ヤマザキ 無限回廊か…やられたな。空間を閉じやがった。

シルバー どういうこと?

ヤマザキ この階段に終わりはない。行けども行けども階段があるだけだ。

ブルー じゃ、別の階段で…。

ヤマザキ 無駄だ。多分下りもきりがないはずだ。

レッド 待てよ…こんなことができるのは…。

ヤマザキ ハルコだろうな。

シルバー じゃ何?ハルコが私たちのジャマしてるっていうの?

…冗談じゃないわよ。作者敵に回したら、

私たちに勝ち目ないじゃない。


***

 

ハルコ 来られるわけないのよ。私に不可能はないんだから。

デウス 奴等は不可能を可能にしてきた。

ハルコ 私が可能にしてあげたのよ。

デウス そのお前が生んだやつらだろう。不可能だとなぜ言える。

ハルコ これは物語じゃないのよ。

デウス どうしても無理だというのか。

ハルコ そうよ。

デウス ならば、こうしたらどうする?

 

デウス、ハルコののどを右手一本でしめる。

 

ハルコ 何を…。

デウス …死ね!

 

 



 

レッド あきらめるな、みんな!まだ方法はある。

ブルー レッド。

レッド 中がダメなら外からだ。窓から外に出て、壁をよじ登る。

…狭い階段だからハルコはこんな無限回廊を

想像できるんだ。でも外に出れば…。

ブルー なるほど。

ヤマザキ ちょっと待て。このマンションを登る気か?

レッド そのつもりだ。

ヤマザキ バカ言うな、7、8階はあるぞ!

レッド それがどうした。

ヤマザキ 落ちたら死ぬんだぞ。

レッド 高い所には慣れてる。

ヤマザキ これは物語じゃない!

レッド 同じことだ。

ヤマザキ 何が!

レッド 俺たちがヒーローであることに変わりはない。

ヤマザキ …お前。

シルバー ま、そういうことよね。

ブルー 心配するなよ。ご都合主義はいつものことだ。

 

行こうとする三人。

 

ヤマザキ 待てよ。

 

止まる三人。

 

ヤマザキ なんでそんなに頑張れるんだよ…自分のことでもないのに…。

レッド ヤマザキさん…。

ヤマザキ レッド…お前ならもう気づいてるんだろ?

…ハルコを助けるってことは…次元断層を閉じるってことは、

お前たちがこの世から消滅することを意味するんだぞ!

それでも行くのか!?

レッド …そういう役だからな。

 

間。

 

レッド 行くぜぇ、みんな!

ブルー・シルバー おう!

 

三人去る。

遅れてヤマザキ去る。

 

 

***

 

 

ハルコ 何のつもり?

デウス お前を殺す…いや、殺そうとする。お前がピンチになれば、

奴らは必ず現れる。あいつらはそういうヤツだ。

ハルコ 私が助けを請わなかったら?

デウス 請わずにいられるのか?

ハルコ あんたに私は殺せないわ…あんたそういう人じゃないもの。

デウス なめるな!私はカイザーデウスだ!

 

両手で絞めにかかる。

ハルコ、抵抗しない。

 

ハルコ 私がもしホントに死んだら、戦艦は止まらないのよ。

それでもやるの?

デウス そんな脅しが通用するか。

ハルコ 脅しだと思うの?

デウス …面白い…脅しかどうか試してくれるわ!

 

デウス、両手に力を込める。


<続く>

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