劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)は降って来る」

作/福冨英玄

<12 ただいま>

 

 

銃声!

デウスの腕がはじかれる。

デウス会心の笑み。

 

デウス いいタイミングだ…一応聞いてやろう…誰だ!

レッド 閃光戦隊!

三人 プラズマン!

 


レッド デウス!そこを動くな!

 

デウス、三人の前に立ちふさがる。

それはハルコをかばっているようにも見える。

デウスVSプラズマン

しかしデウスは本気で戦っていないので押さえこまれる。

 

レッド 大丈夫か、ハルコ?

ハルコ …。

レッド ハルコ!

ブルー どうした?

レッド ハルコの様子がおかしい。デウス!貴様ハルコに何をした!

デウス バカモノ!そんなことにかまっている場合か!

レッド え?

デウス 戦艦が先だろうが!早くなんとかしろ!

レッド …ヤマザキさん。

ヤマザキ やってる。(アタッシェケースを開け、何やらやっている)

デウス (自分を押さえているブルー・シルバーに)

おい、いい加減に離さんか。

 

ブルー・シルバー、離す。

 

レッド デウス…どうして…。

デウス ま、「お前を倒すのはこの私だ」ってとこだな。

レッド 黄金パターンだな。

デウス 悪くない。だがなレッド、本当の敵は向こうかもしれんぞ。

 


ハルコ、呆然と立っている。

 


レッド ヤマザキさん。

ヤマザキ (一生懸命)

ハルコ …無駄よ…何をやっても…必死にあがいたって…

惨めになるだけ…。

 

ヤマザキ、ケースを乱暴に閉じる。

 

ヤマザキ …遅かった…。

レッド ヤマザキさん?

ヤマザキ …遅すぎた…ハルコは次元の向こう側へ足をつっこみ

すぎた…もう俺一人の力じゃ引っ張り上げられない…

ゲームセットだ。

シルバー …そんな…。

 

間。

 

レッド うそだ…ヤマザキさん。あんたうそをついている。

ヤマザキ …嫌味なほどに察しがいいな、お前は…だがなレッド、

今回ばっかしは命取りかもしれんぞ。

レッド どういうことだ?

ヤマザキ 方法はある。限りなく不可能に近いが、なくはない。

聞きたいか?

レッド もちろんだ。

ヤマザキ …聞けばあとには引けんぞ。

レッド 後悔はしないさ。

ヤマザキ なら聞かせてやる。…方法そのものは簡単だ…

ハルコが次元の向こうへ落っこちすぎた。

俺の力では引っ張り上げられない。

引っ張りあげられないなら、その部分は切り捨てればいい。

つまり…。

 

ヤマザキ、銃を出す。

 

ヤマザキ 一人だ…お前ら架空体のうち、誰か一人を消去すればいい。

それで片がつく。

レッド …わかった。…俺がやろう。

ヤマザキ 違う。決めるのはお前じゃない。マスターであるハルコだ。

ハルコ …誰でもいいの?

ヤマザキ 選べるんならな…。この銃はただの銃じゃない。

弾丸はあんたの殺意だ。

 

ハルコ、薄笑いをうかべる。

 

ハルコ いいじゃない…どうせこの世界にいたってすることないんだし、

それなら一人の命で世界が助かるんだもの。

安いものよねえ、レッド。

 

ハルコ、ゆっくりと銃口を向ける。

 

ハルコ さよなら…何にもなかったけど、それでも楽しかった。

レッド え?

 

ハルコ、銃口を自分のこめかみに当てる。

 

デウス・レッド ダメだ!

 

引き金をひくハルコ。

銃鉄が落ちる。

何も起きない。

 

レッド だめだよハルコ…そんなのは俺たちが認めない。

ハルコ 何でよ…何でよ、あんたたちキャラクターでしょ?

少しは私の言うこと聞きなさいよ。

デウス それはこっちのセリフだ!

ハルコ え?

デウス 少しはわれらの声を聞け。昨日失くしたお前自身の声だ。

ハルコ …。

 

間。

 

レッド デウス…。

デウス 世の中には三種類の生物しかいない。

加害者と被害者と救済者だ。お前は被害者のつもりかも

しれんが、それは妄想だ。お前は被害者の皮をかぶった

加害者だ。

ハルコ …。

ヤマザキ …で?その加害者によって害をうける何もしらない

かわいそうな全地球の三次元人は、

誰が救ってくれるんだ?

 

一同…。

 

ヤマザキ だから不可能だって言ったんだ。誰か一人をいけにえに

することなんか、お前らにできるわけがない。

表現は違っていても、お前らは同一人物だからな。

結局、野村ハルコはお人よしなんだよ。

どうしようもないほどにな。

 

戦艦の降下音。もうずいぶん大きい。

 

ヤマザキ …まあ…なんていうか…気に病むことはない。

多分…誰もがそうだから…気休めだけどな…。

レッド 俺はあきらめない…たとえそれが無駄なあがきだとしても、

あがけばあがくだけ惨めになったとしても、

俺は絶対にあきらめない。そして…俺があきらめない限り、

野村ハルコはあきらめない…絶対にだ。

 

 


 

デウス その言葉に偽りはないな。

レッド 同じ自分だろう?信じろよ。

デウス いいだろう。ならばレッド、私を撃て。

一同 !

デウス クライマックスには申し分ないシチュエーションだ。

レッド デウス…。

デウス …そういう役だ。

レッド つらい役だな。

デウス お互いな。

ブルー レッド…。

シルバー レッド…。

 

レッド、うなずく。


三人ゆっくりとハルコによると、レッド、ハルコの右手を取る。

 

レッド 引き金は君が…。

ヤマザキ お、おい…。

レッド ヤマザキさん…俺たちに、「野村ハルコに不可能はない」んだよ。

 

 

 

オープニングの立ち位置につく。

 

デウス 勝てると思っているのか。

レッド 無理だろうな。

デウス ならばなぜ一人残った。仲間を逃しても、

地球が消滅してしまえば同じことだ。

レッド デウス…俺は勝てないかもしれない。

そして俺は死ぬかもしれない。だがこれだけは言える。

この地球は俺が守ってみせる。たとえこの命に代えても。

 

レッド、変身ブレスをひきちぎる。

 

デウス !貴様、残りのエネルギーを!

レッド いくぞデウス!

 

4人、ハルコを見る。

ハルコ、前を向けない。

 

デウス ハルコ!世界を呪いたくなるほど描きたかった最終回だろう!

目をそらすな!お前が幕をひくんだ!

ハルコ デウス…。

デウス 私は死ぬかもしれん。だがこれだけは言える。

「野村ハルコ」は私が守って見せる。

たとえこの命に代えても!

ハルコ …いくよ、デウス。

デウス これが俺の最後の力だ!

 

ひときわ高い銃声。

デウス、倒れる。

三人、ハルコのそばをゆっくり離れる。

レッド、デウスを抱え起こす。

 

ヤマザキ …これでよかったのか?

レッド 後悔はしない。

ヤマザキ そうか…。

 

ヤマザキ、ハルコに話そうとする。レッド、止める。

ヤマザキ、合図を送る。

4人とヤマザキ、やわらかな光に包まれる。

 

ハルコ さよなら。

レッド 違うよ。ただいまだ。

 

5人消える。

ハルコ、自分の左肩を右手で抱き寄せる。

暗転。

 

 

 

 

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