劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)は降って来る」

作/福冨英玄

<最終話 日常>

 


ハルコの家。


ハルコ、最初のシーン同様、寝ている。

起きる。

時計を見る。明け方。

 

ハルコ ちょっとぉ…いくらなんでも夢オチってのはないんじゃないの?

山崎 え?何か言いました?

ハルコ !…山崎さん、何で家にいるの?

山崎 心配になって戻ってきてみたんですよ。そしたら案の定、

鍵は開けっ放しで…で、知っちゃった以上

ほって帰るわけにもいかないから、寝ずの番ですよ。

ハルコ 面目ない…。

山崎 おまけにこんなとこで寝ちゃって、春先ったってまだ寒いんですから。

漫画家は体力勝負だって言ってるでしょ。

風邪でもひいたらどうするんです。

ハルコ 私は漫画家じゃないんだよ。

山崎 あ…すいません、いや、決してそういう意味では…。

 

うろたえる山崎  

 

山崎 だからですね、その…とにかく、すいませんでした。

ハルコ ?

山崎 最終回、描けなくなっちゃって。

ハルコ …気にしないで。何てのかな…まだうまく言えないけど…

それはそれでけじめっていうか…そんな風に思えるの。

山崎 はぁ。

ハルコ 山崎さんはどうするの?

山崎 僕?いや、僕は…雑誌がなくなったって、

出版社がつぶれたわけじゃないですから…。

ハルコ あ、そっか。

山崎 また、ポルノ小説の挿絵かな。ハルコさんは?

ハルコ そうね…とりあえずバイト探さなきゃならないし…それに。

山崎 それに?

ハルコ 原稿描かなきゃ。持込み用のヤツ。

山崎 …そうですよね!

ハルコ でも…何にしても、とりあえずもう少し寝る。

山崎 じゃ、僕も帰りますから。

ハルコ うん。

山崎 今度こそ、かぎかけて、着替えてベッドで寝てくださいよ。

ハルコ 体力勝負だもんね。

山崎 そういうこと。

 

出ていこうとする山崎。

 

山崎 ねえハルコさん…次はラブコメ描きませんか?

ハルコ そうね。そうしようかな。いい者も悪い者もでてこないし。

山崎 戦艦が落ちてくることもないし。

ハルコ そうそう。

 

間。

 

ハルコ え?

 

そして再び始まる日常。

負けるな!ぼくらの…。

 

 

 

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