劇団あとの祭り Vol.7

「BYPLAYERは死なない」

作/福冨英玄

<4 一心同体>

 

ところ変わって喫茶店

テーブルを挟んで、片面に山崎

片側に原稿を読みながらハルコが座っている

山崎、死んでいるかのよう

 

ハルコ  (独り言)巨大ヒーローものねえ…まあ、わかんなくはないけどさ。

…つまりあれでしょ?一頃の小難しい理屈をこねるSFより、

誰もが楽しめて楽に読み飛ばせるストーリーをってことでしょ?

わかるけどね。…雑誌のカラーもはっきりするから、

固定客つかみやすいだろうし…でもさ、長続きしないと思うけどな…

はっきり言って飽きるよ、これ。ね、そう思わない?

 

山崎に呼びかけるが、山崎死んでいる

ハルコ続きを読む。

山崎、首ががくっと落ちて、あわてて目を覚ます。

 

山崎  …へ?…へ?

ハルコ  あ、おはよ。

山崎  !ハルコさん。

ハルコ  大丈夫?疲れてるみたいだけど。

山崎  どうして?

ハルコ  久しぶりに来たら、道に迷っちゃってさ。9時だったよね。

9時半頃に来ちゃってさ。そしたら山崎さん寝てたから、

起こしちゃ悪いかと思って。

山崎  あー…うん、まあ。

ハルコ  あ、ごめん、勝手に読んでるよ。これでしょ挿絵入れるのって。

山崎  えーっと、あ、そうそう。

ハルコ  もうちょっと待ってね。私読むの遅いんだ。

山崎  あ…はあ…。

ハルコ  寝てていいよ。起こすから。

山崎  !…どうも…

山崎、自分の体を確かめる

ケガ一つしていない

 

山崎  …確か…飛び降りて…どうして?

ヤマザキ  たかが三次元人、どうにかなるって言わなかったか?

山崎  わあっ!

 

飛び上がる山崎

周囲の目

謝りつつ、座りなおす

 

山崎  …いたのかよ、お前。

ヤマザキ  そういう言い方はないだろ?俺のおかげで死なずにすんだのに。

山崎  頼んだ覚えはない。

ヤマザキ  まあ、いいじゃないの。

山崎  よくないよ!

 

周囲の目

 

ヤマザキ  結構ぎりぎりだったんだぞ、お前と合体するの。

もう少し早ければ何事もなく着地できたんだけど、

何しろ間一髪だったからな。気絶してるお前を念力で

どうにかここまで運んだんだけど、疲れた疲れた。

山崎  どうしてここがわかったんだよ。

ヤマザキ  お前の記憶にあったからな。一心同体、お前の記憶は俺のもの。

山崎  プライバシーの侵害だ。いくら宇宙人でもやっていいことと悪いことがあるぞ。

ヤマザキ  俺は5次元精霊だ。安っぽい呼び方しないでもらおうか。

山崎  お前、ずうずうしいにもほどがある…

ヤマザキ  どうでもいいけど、何か頼んだ方がいいぞ。

何しろお前、オーダーもしないで二時間くらい寝てたんだからな。

山崎  すいません!ホット一つ、モーニング付で!

 

 

< 続く >

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