劇団あとの祭り Vol.7

「BYPLAYERは死なない」

作/福冨英玄

<17 みんな>

 

 

山崎寝ている。

ヤマザキ、携帯電話をかけている。

 

ヤマザキ  ヤマザキより中央へ、ヤマザキより中央へ…、もしもし、あ、課長ですか?

ども、ヤマザキです。…ええ…、いやあ、それが返り討ちに

あっちゃいましてね…自慢じゃありませんが、死にかけですよ、

いやホント。…今ですか?ええ、現地人と合体できましたんで、

なんとか…ええ、それでですね、ものは相談なんですがね…

もし、奴の捕獲または消去が不可能な場合…例の奴、お願いします。

被害は最小限ですみます。…はい、俺がそう判断しました。

…はい…じゃあ、12時。明日の正午になっても作戦終了のコールが

なければってことで…ええ…じゃ、よろしくお願いします。

 

山崎、起きる。

 

ヤマザキ  起きたか?

山崎  ああ。

ヤマザキ  …悪かったな、ムリさせて。どうもこれは三次元人には

負担が大きすぎるらしい。

山崎  …そうか。何か頭がクラクラすると思ったら…。

ヤマザキ  立てるか。

山崎  なんとかな。

ヤマザキ  じゃあ、行こう。

山崎  どこへ?

ヤマザキ  決めてない。

山崎  なんだよそれ。

ヤマザキ  さっきの戦いで手の内を全部さらしちまった。

奴が先手を打って行動したのは多分そのためだ。

俺たちははめられたって訳だ。だとしたら、こっちもやりかたを

考えなくちゃならない。少なくとも、奴のそばから一度離れて、

体制を整える必要がある。

山崎  え?でも、何だか訳わかんないのはやっつけたじゃないか。

ヤマザキ  あれは本体じゃない。奴の力はあんなもんじゃないんだ。

ただ奴はこの次元には不慣れだからな。付け入るスキは

そこしかないから、時間をおきたくはないんだが…。

山崎  ちょっと待てよ。じゃあ、もう一度あれをやれってのか。

ヤマザキ  もう一回で済むのなら、めっけもんだな。

山崎  そんなこと聞いてないぞ。

ヤマザキ  言った覚えもない。

山崎  契約違反だ!冗談じゃない。俺は降りるぞ!

ヤマザキ  降りるったってどうすんだよ。俺とお前は一心同体なんだぜ。

山崎  だったら切り離せばいいだろ?

ヤマザキ  そう簡単にはやれるもんじゃないんだよ。

山崎  知ったことかよ。

ヤマザキ  そんなこと言っていいのか。

山崎  …なんだよ。

ヤマザキ  お前、さっきの俺の電話、聞いてただろ?

山崎  ! …別に盗み聞きしたわけじゃないさ。聞こえちゃったんだよ。

ヤマザキ  責めてるわけじゃない。むしろ聞いてくれて好都合だ。

山崎  ?

ヤマザキ  さっきの電話でちょっと出前を頼んだ。

山崎  出前?何の。

ヤマザキ  爆弾。

山崎  ああ、なるほどね。奴をやっつける新兵器ってワケだ。

中盤の中だるみを防ぐ常套手段だな。

ヤマザキ  だがその爆弾の勢力が、この次元そのものを吹っ飛ばすほどの

ものだとしたら?

山崎  え?

ヤマザキ  爆弾ってのは例えだ。俺よりずっと高位の霊になれば、

次元そのものを吹っ飛ばすことができる。

山崎  そんなことしたら…。

ヤマザキ  ああ…みんな死ぬな。でも、そのみんなの中に奴も含まれる。

 

 

< 続く >

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