劇団あとの祭り 番外公演

「三人の地蔵」

作/中島充雅

< その1 幕前 >

 

 

客入れ時から舞台上では、三人の地蔵が立っている。

 

静かに目を閉じている。

 

舞台上には何もない。

 

雨が降っている。寒さに凍えているようだ。

時々、人が通り過ぎるが、地蔵には見向きもしない。

 

アナゴさんが通り過ぎる。

イカ男が通る。

本田先生が通り過ぎる。

エステ魔王が通り過ぎる。

レストランのボーイが通り過ぎる。

フンババが通り過ぎる。

忍者が通り過ぎる。

ハードボイルドな男が通り過ぎる。

門屋町一平が麺を打ちながら通り過ぎる。とおー。とおー。

 

そして…

地蔵たちはそこに立ち、ただ時代だけが

彼らの周りを通り過ぎていくだけだった。

 

地蔵たちにとって、長い時間が通り過ぎる。

 

日本昔話風の男が客入れをしているが、

そろそろ前説を始める。

 

 

日本  本日は劇団あとの祭り番外公演「三人の地蔵」に

ご来場いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、開演に先立ちまして、お客様に3つのお願いがございます。

まず、第1にポケットベルや携帯電話の音がでないようにしてください。

隣のお客様がびっくりします。第2にカメラのフラッシュ撮影は

ご遠慮ください。役者が恥ずかしがります。第3に演出の都合上、

非常口の電気を消します。非常の際は、この3人の地蔵が適切に

みなさんを誘導しますので、安心してください。

それではまもなく開演です。

今しばらくお待ちください。

 

 

「日本昔話のテーマ」の幕前がアップする。

 

< 次へ続く >

  


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