女 …。
地蔵達 …。
女 誰、こんなの持ってきたの。ちょっと出てきなさいよ。隠れてるんでしょ。
久しぶりに会うからって、冗談きついんじゃないの。
女、奥に消える。
地蔵たち、ちょっと動く。
女、すぐに戻ってくる。
女 …。
地蔵達 …。
女 もー、どこにいるのよ。こないだ1時間も雨の中待ったのよ。
ロンリーだったんだから…その時地蔵にさあ、傘を…。
とかいいながら、奥に消える。
女 地蔵?
女、顔を出す。
地蔵、あわてて動くが、それから直立不動したってもう遅い。
女、地蔵2に近づく。
女 …。
女、地蔵をつつく。
地蔵2 やってられるカー。
といって、米俵を女に投げつける。
地響きとともに、米俵を抱え、ぶっ倒れる女。
地蔵1 何をするんだ。
米俵を投げつける。
地蔵2 痛。
地蔵3 そうよ。ひどいじゃない。
米俵を投げつける。
地蔵2 んだとおー。
とかいって、お互いに米俵をぶつけ合い、どつきあう。
そのたびに、地響きがこだまする。
女 今、何時だと思ってんのよ。ここアパートなの。大きな音だしたら
大家さんに怒られるでしょ。
ピタ
女 何よ。これは。
地蔵1 …恩返し。
女 何の。
地蔵3 傘の。
女 …。
地蔵2 筋なんだよ。
女 …筋。
地蔵達 そう。
女 何の。
地蔵達 地蔵の。
女 あー、あーあーあー、…笠地蔵。
地蔵達 そうそうそう。
和やかな雰囲気。
笑いがこぼれる。
女 これ何。
地蔵達 米俵。
全員爆笑。
女 いらない。
全員爆笑。
途中で「やってられるかよ」「やってられるかよ」と
地蔵1と地蔵2は体をぶつけ合う。
ガキンガキンと音がする。
女と地蔵3は止めに入る。
女 いったー、手、はさんだ。
女、手をさする。へたりこむ。
地蔵達、取り囲む。
念仏を唱える。
女、逃げる。
女 やめてよー。なんで、ちょっとすごい痛い。何これ。米俵。ちょっとー。
あんた達、いったい何なのよ。
地蔵2 おい、自己紹介しろよ。
地蔵1 地蔵です。
地蔵3 地蔵です。
地蔵達 僕たち地蔵です。
女 見りゃわかるのよ。何しに来たのよ。
地蔵1 恩返しに来たんですよ。
地蔵2 笠をくれたお礼に。
地蔵3 米俵をかついで。
地蔵達 僕たち律儀な地蔵です。
女 米なんかいらないわよ。
地蔵1 米食べないの。
地蔵3 米を食べないと。
地蔵2 罰が当たるぜ。
地蔵、念仏を唱える。
女 何念じてるのよ。
地蔵2・3 罰が当たらないように。
地蔵1 罰が当たるように。
女 えっ。
地蔵2 そりゃまずいだろ。
地蔵3 何しにきたのよ。
地蔵1 けっ…。
女 だいたい、どうやって入ってきたのよ。この部屋に。私、刑事さんと
玄関でお話していたのよ。
地蔵達 …。
女 非常階段からベランダに入ってきたの?それ知ってるのは彼だけよ。
地蔵2 彼って…。
女 私の彼よ。今夜来るの。今すぐ…。
地蔵1 こーんーやー。今、何時だーーーーー。
女、とび蹴り。地響き。
女 文句あるカー。
地蔵1 けったよ。今けったよ。
地蔵3 私も見たわ。
地蔵2 これが、この女の正体だ。夢なんか忘れちまえ。
地蔵1 わかった!
大家がいつのまにかいる。
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