劇団あとの祭り 番外公演

「三人の地蔵」

作/中島充雅

< その9 母vs地蔵 >

 

 

地蔵達1・3、布団の中に入る。

 

母  なんでこの枕が二つあるのか、ちゃんと説明しなさい。

 

布団の山がうねる。

激しくもみあっている様子。ガキンガキン。

地蔵1・3、布団の中で…

母と女は呆然と見る。

 

激しさは頂上を登りつめ、そして、ひゅーと冷めていく。

地蔵達、顔を出す。

地蔵1、たばこを吸い出す。

 

地蔵3  もう、寝たばこやめて…。

母  …。

地蔵1  今夜の君はとってもかわいかったよ。

 

デコピン。コツ。

 

地蔵3  うふ。もうばか。

 

デコピン。コツ。

 

そして、二人は爆笑。

そして、女と母の顔を真剣に見つめる。

 

間。

 

地蔵2、叫ぶ。

 

地蔵2  さて、何点でしょう!

女  …。

地蔵2  10点満点で点数をおつけください。

女  母さん。

母  なあに。

女  点数をつけてあげて。

母   私が。

女  お願い。

地蔵2  何点でしょう。

女  お願い早く。

母  でも。

地蔵2  点数を。

女  後悔しないうちに早く。

 

間。

 

母  3点。

地蔵達  ばっかやろー。

 

地蔵達、布団を投げ、米俵を投げ、大騒ぎ。

地蔵達、母親を掛け布団で巻き上げ、ロープでしばり、三人で担いでしまう。

 

地蔵1  二人の夜を邪魔する敵は俺たちがなんとかしてやる。

母  ちょっとあなた達、なんなの。

地蔵3  君にとって邪魔なものは、私たちにとっても邪魔なの。

母  ちょっとなんで縛るの。

地蔵2  まあ、掛け布団がなくたって、敷布団がある。

地蔵達  それで十分じゃないか。

 

地蔵達、日本昔話のテーマを口ずさみながら、母親を担いで

どこかへ行ってしまう。

 

女  ちょっとどこへ連れていくのよ。

地蔵1  隣の部屋で話し合いをしてくる。

 

以下、左右同時進行。

 

母の声  ちょっとなんで縛るの。

私が何をしたって言うの。ちょっと

ほどいてちょうだい。私は娘と

大事な話があるの。

だいたいあなたたち何者。

地蔵。地蔵って何。地蔵じゃ

わけわかんないでしょ。

    つまんないんだからしょうがないでしょ。

何急にやってんの。やめなさーい。

やめなさーい。

 

地蔵2  3点つけました。

地蔵1  3点だよな。

地蔵3  身削ったネタだったのに。

地蔵1  地蔵です。

地蔵2  地蔵です。

地蔵3  地蔵です。

地蔵達 3点しかもらえない地蔵です。

地蔵1  予選落ちかな。

地蔵2  念仏始めー。

地蔵達  うだーうだーうだー。

 

 

などとやっている間にピンポン。

 

女  あっはい。あっ、お帰り。ご苦労様。あっそう

それ買ってきたの。あっうん。いいよ。あがって、というか、

ちょっと今取り込んでるの。えっ、なんか騒がしい。

あー、うん、今母親が来てるの。

あっ、帰らないで。帰らないでー。

そんな、あってくれなんて言ってる訳じゃないって。

大丈夫なの。うん。もうすぐ帰るって。

電車。ううん、走って帰るって。うん。本当。

えっお経が聞こえる。あっお母さんの趣味なの。

うん、大丈夫。やめさすから今すぐ。じゃあさあ、

ちょっと外で、時間つぶして来てくれる。5分でいいから。

大丈夫。絶対帰っちゃダメよ。絶対ね。うん。

 

婆子達が念仏を唱えながら、奥から登場。

地蔵達も念仏を唱えながら、登場。

2者が遭遇。

 

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