日本 女には双子のおばあちゃんがいた。
一人を金婆ちゃん。金歯がよく似合った。
一人は銀婆ちゃん。銀歯がよく似合った。
二人は双子だけど全然似てなかったそうじゃ。
二人の婆さん達は、それはたいそうにボケとったそうじゃ。
女 おばあちゃんたち、こんなところで何やってるの。
日本 女はいきなり、強気にでた。今度の敵は強いのじゃ。一気に勝負にでた。
婆子2 だってさ。
婆子1 だってさ。
女 何よ。
婆子2 おなかすいたんだよ。
婆子1 ケメ子さんがさあ、ご飯作ってくれないのさ。
婆子2 だから、ケメ子さん探して。
婆子1 ケメ子さんおっかけてきたんだよ。
婆子達 ケメ子さーん。
母の声 はーい。
婆いこうとする。
女 待ちなさい。ご飯なら家で食べればいいでしょ。
婆子1 ついでに孫の顔見に来たんだよ。
婆子達 まごー。
女 ここにいるでしょ。
婆子1 最近、目が悪なったよねー。
婆子2 耳もね。
日本 あと、5分でこいつらを片付けなければならないと思うと、
女はとほーにくれとったそうじゃー。
女 だいたいから今何時だと思ってんの。
婆子1 おやじーじゃよ。
婆子2 (地蔵に)ケメ子さん、ごはん作っておくれ。
女 それは地蔵よ。
婆子1 えっ。
女 それは地蔵。
婆子達 いただきます。
女 それはごちそう。
婆子1 よしよし、おこづかいをあげよーね。
女 それは小僧。
婆子2 ぱおーん。
女 それも小象。
婆子1 胸を大きく広げて横ふり。
女 それはラジオ体操。全然違うんだ!
婆子2 耳悪いんだ!
女 わざとでしょ。わざとわかんないふりしてるんでしょ。
婆子1 わかんないんだよー。
婆子2 ホントなんだよ。
婆子1 信じてくれよー。
婆子2 私ら家で居場所ないんだー。
婆子1 誰も私たちの言うこと信じてくれないんだー。
婆子2 ケメ子さんご飯作ってくれないし。
婆子1 ぼけても誰もつっこんでくれないし。
婆子2 つっこんでくれて嬉しかったよー。
婆子1 会いに来てよかったよー。
婆子達 まごー。
女 あはあはあはあはあはあはあは…。
日本 女はとうとう壊れたそうじゃ。
女、壊れる。
婆子1 おもしろいね。
婆子2 そうだね。
婆子達、笑いながら、女を布団に寝かせる。
日本 こうして、おばあちゃんと女は、それはそれはたいそう楽しそうに笑い、
女の大切な一夜はふけていったそうな。
三人のやさしい笠地蔵たちは、女の成仏を祈り、
いつまでもいつまでも念仏を唱えたそうじゃ。
婆子達も念仏。
<次へ>
<前へ>