劇団あとの祭り 番外公演

「三人の地蔵」

作/中島充雅

< その13 二宮金次郎 >

 

 

ニ宮金次郎が現れる。

 

二宮  あのー。

女  えっ。

二宮  すいません。ここに地蔵が来ませんでしたか。

女  …あの。

ニ宮  地蔵来ました?

女  ぼくね。

ニ宮  はい。

女  名前は。

ニ宮  ニ宮金次郎

女  そう。

ニ宮  うん。

女  土足だよ。

ニ宮  うん。

女  ぬぎなさい。

ニ宮  いや。

女  なんで。

ニ宮  石だから。ぬげない。

女  そう。

ニ宮  うん。サイタサイタサクラガサイタ。

女  何それ。

ニ宮  教科書。勉強してるんだ。薪背負ってさ。家の仕事手伝いながら

勉強してるんだぜ。えらいだろ。

女  そう。でも、本読みながら登下校したら、きっと車にひかれて死ぬわ。

ニ宮  ううん。僕、石だから大丈夫なんだ。

女  そう。僕、とっても強いんだね。

ニ宮  僕、うーんと勉強してね、将来は大蔵官僚になるんだ。最強だろ。

女  そう、そして、庶民の生活を土足で踏みにじるのね。

ニ宮  いやー、お姉さんには一本とられたな。

女  でていきなさい。

ニ宮  いやだ。

女  お姉さんね、今日、全てを失ったの。うふ。だから、私が正常なうちに

でてって。もーなんでもありだもん私。

 

女は笑う。

 

ニ宮  お姉さん、どうしたの。

女  やっておしまい。

婆子達  いえっさー。

ニ宮  僕たちは、石仲間の地蔵達を探しに来たんだよ。

女  こいつをしとめたら、ごはん作ってあげるよ。

婆子達  いえっさー。

ニ宮  地蔵達はどこに行ったの。

女  攻撃準備。

婆子1  老人全快。

婆子2  ぶるぶるぶるぶる。

 

婆子達は攻撃準備。

 

婆子1  もっとこう腰を伸ばす。

婆子2  あー。

婆子1  伸ばす。

婆子2  うー。

ニ宮  それはうわさのボーリング攻撃。

女  小学校の中庭にお帰り、坊や。

婆子2  老人の青春と腰は帰ってこないんですよ。

婆子1  その怒りをぶつけなさい。

婆子2  そーれ、ボーリングだー。

女  死ねー。

ニ宮  おとうさーん。

 

雷鳴。

 

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