劇団あとの祭り 番外公演

「三人の地蔵」

作/中島充雅

< その17 恩返しまだまだ >

 

 

女  ありがとうみんな。

地蔵達  えっ。

女   なんだかんだいって助けてくれて。

地蔵達  いやいや。

女  これが地蔵の恩返しなのかな。

地蔵達  まあね。まあね。

 

ドアがひっくりかえる音。

 

女  何かしら。

婆子1  見に行こうね。

婆子2  見に行こうね。

 

婆子達は見に行く。

 

女  もう彼氏もどっか行っちゃったし、今夜は泊まっていってよ。

婆子1  おーい。男の人が倒れているよ。

婆子2  血だらけだよ。

婆子1  ドアの下敷きになってるよ。

婆子2  ドアが倒れて、下敷きになっちゃったんだねー。

婆子達  かわいそーにねー。

 

女、出て行く。

 

女の声  きゃーーーーーー。

 

地蔵達、顔を見合わせる。

 

女の声  きゃー。しっかりして。どうしたの。

えっ、いきなり地蔵が飛び出してきた。

なんで、ちょっとしっかりして。じゃあ何、このドアの下でずっと

下敷きになっていたの。あーお願い、死なないでー。

今夜久しぶりじゃない。ねー…。

地蔵1  帰った方がいいかな。

地蔵2  長居しすぎたよね。

地蔵3  一応感謝してたみたいだし。

地蔵1  とにかく行こう。

地蔵2  いいことした後は気分がいいね。

女の声  しっかりして。目を開けて。

地蔵3  ほら、あの子の声が聞こえる。

地蔵1  ホントだ。

女の声  あー血よ。鼻血がでてきたわ。きゃー倒れないで。

地蔵2  僕たちのおかげだね。

地蔵達  うん。

女の声  もー。

地蔵3  じゃあ、二人の冥福でも祈って。

地蔵1  いっちょ、念仏でも唱えますか。

地蔵達  うだーうだーうだー。

 

女が戻ってくる。手には、ボーリング。

地蔵達、あわてて勝手口に去る。

そのままベランダを抜けていくのだろう。

 

女、すばらしいフォームで、勝手口にボーリングを投げ込む。

ぱっかーん。

 

女、ティッシュを持って、玄関へ出る。

 

母が、布団巻きのまま、出てくる。

 

女の声  じゃあ、あがってよ。鼻血まだ出る?一人で立てる?

 

女も部屋に戻ってくる。

女、母に気付く。

 

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