間。
女、男の元にいったん戻る。
女 ごめん、ちょっと外で待ってて。
女、戻ってくる。
母 …私のこと、忘れてたでしょ。
女 ごめん。忘れてた。
母 隣の部屋で全部聞いてました。あなた変わったお友達がいっぱいいるのね。
お母さんびっくりしたわ。
女 私もびっくりしたよ。
母 外にいる彼ともいい仲なのね。
女 いい仲っていうか。
母 いいじゃない。あがってもらえば。母さんも会いたいわ。あんたのいい人に。
女 いや、今日はちょっと。
母 どうして。
女 だって、なんか恥ずかしいし。
母 なんで恥ずかしいの。
女 だって。
母 だって。
女 枕二つあるし。
母 あるわね。
女 ティッシュまであるし。
母 そうね。
女 うん。
母 それ何。
女 えっ。
母 それ。
女 うん。
母 あれなの。
女 えっ?…あっ、うん。
母 …そう。
女 そう、そうなの。うん。
女、彼が買ってきたものを片付ける。
母 何で片付けるの。どうせすぐ使うなら置いときなさいよ。
女 だから、恥ずかしいって言ってるでしょ。
母 いつ結婚するの。
女 えっ。
母 結婚。
女 わかんないよ。
母 なんで。あなたたち、そういう話、しないの。
女 そういう話しないもん。
母 でも、そういう関係なんでしょ。あなたたち。
女 まだそういう雰囲気じゃないもん。
母 そういう雰囲気だから、枕が二つになったんでしょ。
女 そういうことと結婚は関係ないでしょ。
母 ないわけないわよ。
女 ほっといてよ。
母 ほっとけないわよ。今はね、いいのよ。
好きだ腫れた言ってるうちはいいのよ。
でもそのうちにね。傷つくのはあなたよ。
捨てられたらどーすんのよ。
女 捨てられるわけないでしょ。
母 なんでそんなことわかるのよ。
女 わかるわよ。
母 捨てるか捨てられないか何でわかるの。
彼の心のことがなんでわかるのよ。
彼の心はあなたの心じゃないでしょ。
女 何言ってるのよ。
母 結婚の約束をしなさい。彼の心を確かめなさい。
女 そんなことに何の意味があんのよ!
母 …心配して言ってるの。
女 …帰ってよ。
母 …帰るわ。おばあちゃん、ちょっと来てください。
婆子達 はいはいはいはいはいはい。
母、布団巻きのまま、帰ろうとする。婆子達がやってくる。
婆子1 ケメ子さん。
婆子2 ご飯作ってくれよ。
母 はいはい。作りますよ。さっ。帰りましょう。
婆子達 はーい。
婆子達、母を担ぐ。
母 あっ、また電話するから。
女 …。
母 …風邪、ひかないでね。
女 …。
母 バイバイ。
女、手を振る。
日本 こうして、母と子は別れたそうじゃ。次第に遠ざかる母と婆子達に、
女はいつまでもいつまでも手をふっていたそうじゃ。
そして、ふと女は玄関の外で男が待っていることに気付いたそうじゃ。
女 あっ、やっべー。彼と母さん、鉢合わせじゃん。
母の声 あらあなた。
女 ちょっとまっ…
母の声 こんばんは。…いつも娘がお世話になってます。
女 えっ。
母の声 あとはよろしくね。
女 …。
日本 こうして、母と婆たちは、さわやかな雰囲気を残して去っていった。
女 今のが母さん。私の。
日本 ふと気付けば、二人はやっと二人っきりになったそうじゃ。
女 あがってよ。今日はいろいろなことがあったの。最初っから説明してあげるから。
さっ、あがって…。
日本 こうして、二人は誰にも邪魔されることなく、すてきな一夜を過ごしたそうじゃ。
地蔵達 めでたし。めでたし。
地蔵達が勝手口から出てくる。
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