バルコニーの下に黒い人影
「飛び降りるんだ、樹里絵津徒(ジュリエット)!
大きく大きくその閉ざされた窓を開けて、
思い切りバルコニーを蹴って飛び降りるんだ!」
丁穂留徒、登場
「いいねえ、バッチシのタイミングだよ。
さすがだねえ、丁穂留徒(ティボルト)」
「ミスター奇夜比由烈徒(キャピュレット)、路美男はまだこないんですか?」
葉里巣(パリス)登場
葉里巣
「そなたは何が不足なのだ。私はそなたのためならなんでもしよう。」
樹里絵津徒
「話に聞く恋は、どれもみな、世界も裏返るほどのめくるめくカーニバルナイト。
静かで平凡な幸せの落ち着いた先は、明日と昨日の区別もつかぬ
墓穴暮らしとは言えますまいか」
奇夜氏 「お見事!」
夫人
「樹里絵津徒も、わけのわからない長ゼリフをいうのが
日に日にうまくなったし、 あとはもういつでもって感じ」
そのとき玄関のベル!
男 「すいませーん。ハンコお願いします!」
夫人 「若いわ。思ってたのよりずっと」
樹里 「私、ロン毛の方が好みなんだけど」
乳母 「いらっしゃいませ」
男 「はあ?」
乳母 「お待ち申し上げておりました、ささ、ずいーっと奥へ」
一同 「…で?」
男 「…?」
丁穂留徒
「ほら、あんたの右の方でがんばってるじゃないか約一名。
電撃的見つめあい!」
男 「何です?それ」
うなぎや
「ねえねえ、路美男ってどれ?
へえーわりかしまともっぽいじゃん」
出前持ち、いきなり抱きついてキス
男 「何すんだよおっ!!」
奇夜氏
「私はね、ただ物事のけじめをつけてもらいたいだけなんですよ。
人生ってもんにドラマツルギーがあるんなら、
もういいかげん山場の一つもこさえてくれなきゃ、
このままじゃ私らあんまり切ないじゃありませんか」
男 「助けてくれ」
一同 「逃がすな!」
樹里絵津徒
「私たちだって、別にあなたを痛めつけたいわけじゃないのよ。
ね、お願い、おっしゃって。
樹里絵津徒、そなたに会って、人生が変わったと」
男 「俺、早く戻らなきゃバイト料もらいそこねるんだよ わかってくれよ」
夫人
「わからないのはあなたの方よ。もうそろそろこの辺で、
どんでん返しの一つでも作ってメリハリつけるのが、
若手劇団の常套手段じゃありませんか」
うなぎや
「初舞台であがってんのかな。でなきゃ少し頭イカレてんじゃないの?」
続きは明日!