携帯魔神サンボンまでのひまつぶし企画
2008 8.11

本番写真 その1
〜携帯魔神登場〜


Scence―0 液晶壊れる

 

客席で重いダンボールを運んでいる2人の男女。

女、太田しじみと男、問山修司2人は明らかに引っ越し作業の途中である。

蝉の声。

 

問山      しじみちゃん、大丈夫?

しじみ  うん。

問山      そっから坂っていうか階段だから。

しじみ  うん。

しじみ、ひざに乗せたダンボールをもう一度手に乗せ立ち上がる。
つるっと滑る。

階段のかどにおしりがあたったのか。鈍い音がする。

 

しじみ  いったあ。

問山      荷物おろすから。大丈夫。

しじみ  私は大丈夫だけど携帯がやな予感。

荷物をもう一度同じように降ろす。
なんとか無理な体勢で、ズボンの後ろのポケットから携帯を取り出すしじみ。

しじみ  液晶割れた。

問山      割れた?

 

              しじみ、携帯の画面を見せる。

 

しじみ  液晶が割れるとこうなるんだ・・・・・・

 

第1幕

Scence―1 引っ越しそば

          はい、あっ、菅原部長、これはこれは、。今、荷物入れました。さすが部長いいお宅にお住まいで、あの、部長、本当にこんないい家、あんな値段で頂いていいんですか。はい。はい。はあ。はい。いえいえいえいえ。へ。今日ですから。昼ですか。はい。いえ、はい、聞こえません。今、電波悪いですかね。もしもーし。もしもーし、聞こえません。周囲山ですから。もしもーし。電波、ああ…

 

          ねえ、おそば食べたら、お昼寝しよ。

          なんで。

          引っ越しでみんな疲れたし。特に私。

          なんで特に私。

          もう、掃除しまくりくりくりました。

          荷物運んでないでしょ。

          掃除しまくりくりくりで、私死にます。

          死なないよ。

          今頃、しじみ達泣いてますよ。問山さんと。坂の途中で、大きな荷物抱えて。

          人生みたいでいいじゃん。

          ・・ふうん。

          え。

          ・・・・・・

          何。

          問山さんよく養子になるって決心したね。

          よっぽどしじみに惚れたんだろ。

          いやあ。あんがいこの家ねらいかな。

        なんで。

          この家みてから、養子になるって話すすんだに。

        それは悪だろ問山君。

         悪だと思うよ。あの男。

         大丈夫か。これから共同生活するのに。

 

Scence―2 迷惑メール

 

しじみ  携帯って、液晶が壊れても、機能に異常はないんだね。

問山      つかえるの?

しじみ  うん多分大丈夫。

問山      メール読み上げ機能使えば、内容が読めるんじゃない。

しじみ  ・・メール読み上げってやつ。

しじみ、携帯の決定ボタンを押す。

読み上げ開始。ロボット的な声で、しゃべりだす携帯。

携帯      ケイタイノエキショウヲコワシタアナタニステキナオシラセ。・・・・チガウヨ・・・・・・。

               間。

 しじみ  何にも言わないね。

問山      迷惑メールか。

携帯      チガウヨ。

2       ・・・・・・

問山      またチガウヨって。

しじみ  何がいいたいのこれ。

携帯      メイワクメールジャナイ。

2       えっ。

携帯      コワレタエキショウノクロイサケメハ、マカイトツナガッテイマス。

2       はあ?

 

問山      故障か。

しじみ  この辺携帯ショップないよね。

問山      ないない。田舎田舎。

しじみ  うわーこまる。ちょっとお父さんに聞いてこよ。携帯ショップ近くにないか。

 

              しじみ、部屋の奥に行く。

 

問山      そんなのあとあと。今日は、荷物全部ほどかないとだめだろう。

 

 しじみがどたどた、家を走る音。

 

問山               こんなぼろい家、そんなどたどた走ったら、壊れてしまうぞ。

                       

押し入れの戸が少し開く。白い手が二本出てきて、右手で口をふさぎ、

左手を首に回して、そのまま押し入れに引き込これて、問山は消える。

 

しじみ  ねえ、問山さん、あれ。問山さんもいない。あれ。

 

 

Scence−3 部長の告白。

夫人               いえいえ、うちのほうこそ、もうしわけないんです。ここ周囲が山に囲まれてるでしょ、いろいろ不便なんですけど、静かでいいところなんです。あっ、携帯電話たまにつながらなくなるから、気をつけてくださいね。もー。こんなぼろい家、もらっていただけて感謝してるんです。

部長               おおおおい。

夫人               何です。

部長               禁句だろ。今の。

夫人               あっ。でも、今の、私たちは大丈夫でしょ。ね。

しじみ           はい?

部長               あっ。

夫人               ・・・・・・教えてないの。

部長               うむ。

夫人               えええ・・・・・・

 

夫人               なんで言わないかったんですか。太田さんにもしものことがあったら

部長               かなえ!。

夫人               はい。

部長               おまえ、俺に何かかくしごとしてないか。

夫人               なんの話です。

しじみ           あのお。何か。

夫人               ・・・・・・

                       さっさっとという音がする。

                       音にしじみが気づく。部長も気づく。

 

しじみ           あれ。誰かいるかな。お母さん掃除してるかな。お母さん、部長さん。

 

                       しじみ、部屋をのぞこうとする。

 

部長               座敷女です。

しじみ           へっ。

部長               あの、これだけは言わせてください。

しじみ           はい。

部長               なんとかなります。

しじみ           はい?

部長               命までとるようなことはしないです。

しじみ           はあ?

部長               というか、すめば都です。はい。

しじみ           何を?

部長               とにかく・・・・・・すいませんでした。

しじみ           あの。

 

                       部長去る。しじみはそれを追いかける。

 

声 部長       ほんとあれですから、すいません。また出直します。その時はすべてお話しします。本当です。約束します。太田君にはくれぐれもよろしく。

 

座敷女がほうきで掃除をしながら現れる。

 

Scence―4 攻撃をうける。

しじみ           誰あなた。

座敷女           この家は神様がすんでる家ですからあ、あたしが掃除するんですよ。
あなたのお父さんもお母さんもあなたのだんなさんも、
この家のほこりですから、あたしが掃除するんですよ。
だから、あなたも掃除して下さい。

しじみ  どういうこと。

***

柱の神     あんたんとこのお父さんなあ。この家のことぼろいぼろいいってなあ。
この家、ずっと支えてきた俺の気持ちにもなってみ。
わしつらい気持ちになってまうがな。

しじみ           あんた何。

柱の神           あんたってなんや。俺が顔しかでてないからって、馬鹿にすんなあ!

押入神   君の彼さあ。実は心の奥底にいろいろしまい込んでいたみたいだよ。

しじみ   あんたは何。

押入神  押し入れの神。まあ、いわゆるあれだね。しまったり、しまいこんだり、
      必要なときはだしたり。そういう神様だね。

***

しじみ  あの、あえて聞くんですけど、この流れでいくと、便所の神様ですか。

便所      はい!

しじみ   すんごい元気なんですけど。どうしてそんなに元気なんですか。

便所   しばらくでてないなあっとかおもってさあ。なんかおもいなあとかおもってさあ。
     それぞれみんな課題をかかえるじゃん。みんな長いこと、便所で考えるじゃん。
     課題を解決しようって、でさあ、でるじゃん。ある日。
     その、きっと。うれしいじゃん。こんなふうに。はいはい!

***

しじみ、最後の力を振り絞り、「メール読み上げ」起動する。

 

携帯      「イデヨダイマジン」

 

              どっかーん。携帯魔神がついに現れる。

 

 

携帯      がんばるぞ!とう!

押入神  誰。君。

携帯      あっ、すいません。携帯魔神〜。あっ、そうか、イッポン。

柱の神  何がいっぽんなんや。

携帯      本当はサンボンなんですけど。電波の状態がこの辺り悪いんで、今はイッポンです。

柱の神  なんやようわからな。

携帯      ええと、なにするんだっけ、あっ、呼ばれたんだった。とう!

携帯      携帯魔神、イッポン!・・・・・・がんばるぞ。あっ、やばい、今、ケンガイになった。

しじみ  あの、いわゆるこの携帯の、いってた。魔神とかゆう方ですか。

携帯      ・・・・・・えっ、何、聞こえない。

しじみ  はあ。

携帯      もっと大きな声で言ってください。

しじみ  ・・・・・・

携帯      ここ電波悪いですね。かけ直します。じゃあ。

しじみ  はあ?どこいくの。

携帯      かえります。

しじみ  はあ。

柱の神   またんかい〜

 

柱の神怒る。家屋揺れる。携帯魔神ふっとぶ。

 

携帯               ああっ、いった。ちょっと待って、僕、衝撃によわいんですけど。
こわれたら、がんばれないじゃないですか。いいんですか。
これなんですか。新型ストラップですか。

しじみ           あっ、あたしの携帯急にくさくなった。えっなんで。うわ最悪。あらいたい〜

風呂男           あらいましょう〜

 

全員  いい湯だな(ア ハハン)いい湯だな(ア ハハン)
    湯気が天井から ポタリと背中に 
    つめてぇな(ア ハハン)つめてぇな(ア ハハン)

携帯   ちょっ、ちょっ、こら、ちょっ、待てよこらあ。何水かけてんだよこらあ。
     何考えてんだよ。水没したらどうすんだよ。
     水没したらどうやってがんばればいいんだよ。
      こら、しぶきかけるなっていうの。こらあ。

しじみ  あの。

携帯      何。

しじみ  これからどうするの。

携帯      そんなこと、自分で考えろよ。

しじみ  ・・・・・・すいません。

 

携帯魔神、はける。

 

 

しじみ、自分の携帯を見つめる。

 

 しじみ  ・・・・・・魔神、よわー。

 

暗転

 

Scence―6 魔神反省する

携帯   今日のうちのひとたち、はじめて、この家にひっこしてきちゃったんですけど、
     なんかいろいろぐちゃぐちゃししちゃって、僕はそのみんなの問題点を
     解決するために、がんばるぞっていって出てきたんです。
     でも、なんかいろいろ僕もはじめてだったんで、なんか暴言まではいちゃって、
     なんか第1印象失敗しちゃって

            いろいろ大変なんだな。

携帯               だから、もっと自分の力が出せるところへ行こうって、草むしりしながら、
今、決めました。私、みんなが帰ってくるまでに、ここをでます。

                   あまったれるな。

携帯               えっ。

                   田舎をばかにするな。電磁波が届かない!?
なら携帯電話の君が自分で努力するべきだろ。

携帯               それは不可能でしょう。

                   都会を捨てて、一生懸命この田舎で生きているのは君だけじゃない。
つらいのは君だけじゃない。俺たちだって!

                   もうやめて。

                   好きで、ハウスクリーナーなんてやるかばかあ。

携帯               ・・・・・・

携帯               ありがとうございました。がんばります。

                   …(笑顔)

<2.神様会議→>

 

<←スタッフも頑張ってます>

 

 

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