公演後のひまつぶし企画
<作者あとがき>   2012.12.3

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今回の作者、福冨クンから文章が届きました

「あとがき」ですね

時間のあるときにごゆっくり。




●本棚のこと

 この芝居の主人公はある意味で「本棚」かも知れません。
比喩的な意味じゃなくて。
だって、主人公の脳内なのですから。

 劇団員のみんなががんばって、大きな本棚を作ってくれて、
それはホントにありがたかったのだけど、
「本気で本を入れる」と聞いて、ちょっとびっくりした。
だって、「生まれてから、所有したことがある本を、入手した順に全て並べる」なんてこと、
リアルにやるのは不可能だと思ったし、また、ストーリーの都合上まずい部分もあるし、
芝居=エンターテイメントとして正しいか、と問うと疑問がある部分でもあるからです。

 例えば、「その本棚には、日記とか、卒業アルバムとかは無いのか」という問題。
記憶喪失という設定でいくと、そういう人生をふり返ることができてしまうものがあってはマズい。
あとは、「雑誌、新聞類は入るの?」ということとか。
←だって、絵としてかっこよくないじゃないですか。

 だから、「本はカバーをかけて、タイトルが読めないようにしよう」
と提案したんだけれど、稽古場の意向で、ホントに本を並べることになりました。

 そうなると、数をそろえる苦労とか、台詞に出てくる本は本気でそろえなきゃならなくて
(アニメ絵本の「赤毛のアン」なんて、そら売ってないわな)、
何かと大変だったそうですが、おかげさまでとても存在感のある本棚になって、
とてもいい舞台空間になったと思っています。

 あと、その気になれば突っ込みどころ満載の本棚だったのですが、
今のところアンケートを読んでいても、
「○○は時代的にはもっと前のはずだ」とか、「○○関係の本が妙に多い」とか、
「女性らしくない」とかいう突っ込みは、無かったと記憶しております。
基本的に肯定的に、好意的に受け取ってもらえたようで、お客様にも感謝しております。



●本のこと


1.「レベル7」

 この本は大学時代に読みまして、
今のところ「続きが気になって、マジで夜眠れない」ということを味わった、
最後の作品です(今後どうかは分からないけど)。

次の日にバイトがあって、さぼろうかと真剣に思ったのだけれど、
それもできなかったので、バイト先にまで持っていって、
空き時間にも読んでた覚えがあります。

 今回、物語に登場した本については、できるだけ間口を広くしようと思って、
映像化されているような本を極力選ぼうと思ったのですが、
「主人公が記憶喪失」というところに自然につなげるために、
映画化されていないけど、この本からスタートすることにしました。

 宮部みゆきは天才だと思います。ホントに。

 

2.「もしドラ」
 
流行にのって買ってみましたが、実は終わりまで読んでない。
映画も観てません。アニメも途中までしか・・・。

 タイトルが出てこなかったのは、台本のミスでした。
フォローするために、館長役の山本が、表紙が見やすいように持ってくれました。
「映画じゃ前田敦子が主人公」で分かってもらえるとありがたいのだけれど・・・。



3.「銀河鉄道の夜」

 「宮沢賢治は、理屈抜きでいい」というのは先輩の言葉からもらいました。
「青いガス灯の灯り」って宮沢賢治っぽいフレーズだと思うのは
僕だけではないと思います。

 登場人物を猫に置き換えた、アニメ映画がありまして、あれもきれいな映像でしたが、
「鷺を捕まえて袋にいれておくと、お菓子になっている」とか、
不思議なセンスだなぁと思います。
でも、「三次空間」「幻想第4次」とかっていうSFっぽい単語も、
本編にもちゃんと出てきます。


 
4. 「ベルサイユのばら」
 男である自分にとっての「少女マンガの代表」っていうと、この辺になるのです。
今回衣装をやってくれた小川さんが大好きで、大学の時、部室に持ってきていて、
大学生くらいの時に一応読みました。

ただ、台詞にあったように「思った以上に難しい」と思ったし、
「オスカルとアンドレって思ったほど絡まない」と思いました。
っていうか、「マリーアントワネットの話」じゃないのか?

 高校の時、友達に勧められて読んだ「生徒諸君!」と
どっちにしようか少し迷ったのだけれど
「コスプレして映えるから」という理由でこっち。
あと、「漫画は読んでないけど、宝塚の舞台ならイメージできる」と言う人が多いのでは、
という期待もあって選択しました。 



5. 「燃えよ剣」

 あとで「旦那さんに勧められて」というところにつなげるために、
「女の人が読まなさそうな、男臭い本」を入れたかったのです。
でも、ここではたと気がついて、「本気で女の人が読まなさそうな本にしたら、
主人公に近い年齢層の女性のお客さんにも伝わらなくなってしまうでは?」と思いまして・・・。

 で、最近はやりの「歴女」に期待して、歴史小説にしました。
土方歳三なら知名度もあるだろうし、新撰組ものは何度も映像化されているし・・・。

 ちなみに、キャラメルBOXの「また逢おうと竜馬は言った」で、
主人公オカモトが傾倒しているのが「竜馬がゆく」。
で、敵(?)のムナカタが傾倒しているのが、この「燃えよ剣」。
「男の一生というものは〜」というセリフがそのまま出てきます。

 あと、この本は、僕も読みました。めっちゃ「燃え」ます。
司馬遼太郎作品で、きちんと読み切ったのはこれだけかも知れない。
だって「竜馬がゆく」も「坂の上の雲」も長いんだもの・・・。



6. 「ハリーポッターと秘密の部屋」

 翻訳物を入れたかったから、っていうのが最初のポイントでした。
さすがに映画が売れただけあって、客席の笑い声が一番大きかった。
ひげのせい?(笑)。

 ふくろう通信の「翻訳者はつらいよ」のコーナーを読むのが好きだったのだけれど、
そういう人が意外と多いことに、今回ネットで調べてはじめて知りました。
これのおかげで「プリン」は「プディング」のことで、デザート全般を指す言葉で、
いわゆるプリンとは別物だって事をはじめて知った。

 「私も作者と同じように、3巻で挫折しました」という意見がアンケートにありましたが、
僕は4巻までは読みましたよ。5巻で挫折しました(笑)。



7. 「たけくらべ」

 読んでないっす(笑)。でも、明治・大正のいわゆる「文豪」の作品も、
1つも出さないわけにはいかんよな、と思って。

 「ガラスの仮面」とつながるのに気がついたのはラッキーでした。
芝居を見に来るような人なら、こっちは知ってるにちがいない。きっと。多分。ねぇ。



8. 「赤毛のアン」

 「ミュージカルを視た」っていうのは、もちろん劇団四季のミュージカルのことです。
ただ、どのシーンにしようかで迷った。
女二人でやるんだからマシュウとのシーンよりは、マリラなんだろうなって思って、
考えた末にあのシーン。

ミュージカルでも「コーディリアって呼んで下さらない?」っていう台詞はあったけれど、
フィッツジェラルドっていう名字まで決めていたとは、
今回原作を斜め読みするまで知らなかった。

 は!ひょっとすると、アンって今時はやりの「中ニ病」の先駆者なのでは(笑)?



9. うさこちゃんとうみ

 うさこちゃんです。ミッフィーではないのです。ええ、そらもう。

 芝居の中で出てきた「違和感」は、誰よりも僕自身が感じていた違和感です。
だって、あの「車」で海までは行かないでしょう?
後の「うさこちゃんとどうぶつえん」では汽車で動物園まで行ってるのに、ですよ。

 どうでもいいけど、この「〜どうぶつえん」の方で、
「かめのせなかにのって、得意顔のうさこちゃん」というのが出てきます。
「どや顔」らしいです。どや顔のうさこちゃん・・・でも口は「×」(笑)。




 というわけで、僕自身も全部読んだわけじゃないですけど、きっとどれも傑作です。多分(笑)。
 冬の夜長におこたに入ってみかんでも食べながら、読書もいいものです。



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