間
山崎 苦手なんだ。
ヤマザキ …何が。
山崎 …。
ヤマザキ ナニが?
山崎 違う!
ヤマザキ 冗談だって…アラシって女のことだろ?
山崎 いや…。
ヤマザキ …ハルコの方か?…そうか?俺は好みだけどな。
山崎 …つらいんだよ。
ヤマザキ え?
山崎 あの子は自分のやりたいことに純粋だからな…。
あの子にガンバッテって言われると、何か100%がんばってないことを
指摘されたみたいで…どうもな。
ヤマザキ ふーん。
山崎 何だよ。
ヤマザキ いや…つまり、お前から見たあの子って、その程度なんだなあと思って。
山崎 …何でもかんでも恋愛沙汰にひっかけるようになったら、たまってる証拠だぜ。
ヤマザキ そういうんじゃなくて。
山崎 ?
ヤマザキ お前さっきから仕事の話しかしてないじゃん。
山崎 !
ヤマザキ …人生最期の時間なんだろ?…他にすることないのか?
山崎 …映画ってわかるか?
ヤマザキ ?あぁ。
山崎 映画を見るのは好きだよ。ビデオじゃなくてな。大画面で見るに
ふさわしい映画を大画面で見るんだ。今、趣味って言えるものが
俺にあるとしたら、それぐらいかな。
ヤマザキ …じゃあ、見に行けばいいじゃないか。金と時間はあるんだろ。
山崎 …じゃあ聞くけど…お前、俺が今から見に行く映画が、
はずれじゃないって保証できるのか?
ヤマザキ え?
山崎 俺が今から見に行く映画が、俺の人生最期の日に見るに
ふさわしい映画だって言い切れるのか?
ヤマザキ そんなの、俺が知るかよ。
山崎 だよな。だからだよ。
ヤマザキ ?
山崎 人生最期の日なんだよ。事をなそうとして悔いを残すぐらいなら、
何もしないことを選ぶね。
ヤマザキ そんなもんか?
山崎 座して死を待つ。なかなか贅沢だろ?
ヤマザキ …怪獣退治はどうするんだよ。
山崎 それは「仕事」だろ。だから「仕事」として片付けるさ。そういうのは得意なんだ。
ヤマザキ 怪獣退治が?
山崎 やりたくない仕事を、それでも片付けることが。
ヤマザキ そんなもんか?
山崎 サラリーマンだからな。
ヤマザキ ふーん。