劇団あとの祭り Vol.7

「BYPLAYERは死なない」

作/福冨英玄

<12 最期の時間 >

 

 

 

山崎  苦手なんだ。

ヤマザキ  …何が。

山崎  …。

ヤマザキ  ナニが?

山崎  違う!

ヤマザキ  冗談だって…アラシって女のことだろ?

山崎  いや…。

ヤマザキ  …ハルコの方か?…そうか?俺は好みだけどな。

山崎  …つらいんだよ。

ヤマザキ  え?

山崎  あの子は自分のやりたいことに純粋だからな…。

あの子にガンバッテって言われると、何か100%がんばってないことを

指摘されたみたいで…どうもな。

ヤマザキ  ふーん。

山崎  何だよ。

ヤマザキ  いや…つまり、お前から見たあの子って、その程度なんだなあと思って。

山崎  …何でもかんでも恋愛沙汰にひっかけるようになったら、たまってる証拠だぜ。

ヤマザキ  そういうんじゃなくて。

山崎  ?

ヤマザキ  お前さっきから仕事の話しかしてないじゃん。

山崎  !

ヤマザキ  …人生最期の時間なんだろ?…他にすることないのか?

山崎  …映画ってわかるか?

ヤマザキ  ?あぁ。

山崎  映画を見るのは好きだよ。ビデオじゃなくてな。大画面で見るに

ふさわしい映画を大画面で見るんだ。今、趣味って言えるものが

俺にあるとしたら、それぐらいかな。

ヤマザキ  …じゃあ、見に行けばいいじゃないか。金と時間はあるんだろ。

山崎  …じゃあ聞くけど…お前、俺が今から見に行く映画が、

はずれじゃないって保証できるのか?

ヤマザキ  え?

山崎  俺が今から見に行く映画が、俺の人生最期の日に見るに

ふさわしい映画だって言い切れるのか?

ヤマザキ  そんなの、俺が知るかよ。

山崎  だよな。だからだよ。

ヤマザキ  ?

山崎  人生最期の日なんだよ。事をなそうとして悔いを残すぐらいなら、

何もしないことを選ぶね。

ヤマザキ  そんなもんか?

山崎  座して死を待つ。なかなか贅沢だろ?

ヤマザキ  …怪獣退治はどうするんだよ。

山崎  それは「仕事」だろ。だから「仕事」として片付けるさ。そういうのは得意なんだ。

ヤマザキ  怪獣退治が?

山崎  やりたくない仕事を、それでも片付けることが。

ヤマザキ  そんなもんか?

山崎  サラリーマンだからな。

ヤマザキ  ふーん。

 

< 続く >

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