劇団あとの祭り Vol.7

「BYPLAYERは死なない」

作/福冨英玄

<13 最強の敵 >

 

 

 

ヤマザキ  でもな、映画の中にも、ヒーローを見守るヒロインてのがいるだろ?

山崎  …また、その話かよ。

ヤマザキ  だってお前…どうせならヒロインに見守られて死にたいじゃないか。そうだろ?

山崎   …まぁな。

ヤマザキ  な、だったらこの際、誰でもいいじゃないか。誰か電話で呼び出せよ。

心当たりの一つや二つあるだろ?

山崎  …ある。

ヤマザキ  …あるか。そうか。

山崎  電話かけなきゃ。

ヤマザキ  そうか。あるか。女だよな、なっ。

山崎  性別でいうなら女だけど…そんなに嬉しいか?

ヤマザキ  だって一心同体なんだよ。俺とお前は…。

山崎  最上級だな、プライバシーの侵害の…。

 

かかるTEL。

 

ハルコ  はい、野村です。

山崎  あ、ハルコさん、山崎です。

ヤマザキ  …おい!

ハルコ  どうしたの?

山崎  いや、それが製作所の方が押してまして。

ヤマザキ  また仕事かよ。

山崎  できたら4時に入稿したいんですけど。

ハルコ  4時!?

山崎  間に合います?…よね。

ハルコ  …だって、まだ下ごしらえもすんでないのに。

山崎  え?

ハルコ  え?あ、ううん、何でもない。…うん、間に合うよ。

山崎  そうですか、じゃその時間に。

ハルコ  あ、ねえ、これ山崎さんでしょ。

山崎  え?

ハルコ  次回予告の文句よ。「愛のために立ち上がれ、平和のために立ち上がれ、

胸に無限の勇気を込めて、悪を切り裂く太刀になれ!」って。

山崎  あ、わかります?

ハルコ  そりゃわかるわよ。私も当時はネームで助けてもらったもの。

山崎  本当は作者にやってもらうつもりだったんだけど、それどころじゃなくなったんで。

ハルコ  新人の相手は大変ね。

山崎  そりゃあね。

ハルコ  私の時も大変だったもんね。

山崎  …それなりにね。

ハルコ  またまた。

山崎  じゃ、4時ごろ行きますんで。

ハルコ  うん。山崎さんもがんばってね。

山崎  う…ん、まあ。

ハルコ  あ、それとさ。

山崎  え?

ハルコ  ホワイトソース、好きだよね。

山崎  え?…まぁ、好きだけど。

ハルコ  そう、じゃあね。

山崎  あぁ、じゃあ。

 

TEL切れる。

 

ヤマザキ  …バカかお前は。

山崎  何が…。

ヤマザキ  …まぁ…いいけどさ。

山崎  何だよ。気になるだろ?言えよ。

ヤマザキ  何でもないよ。

 

次元ひずむ

 

ヤマザキ  !

山崎  どうかしたのか?

ヤマザキ  次元がひずんだ…奴め、力を使ったな!

山崎  奴って?

ヤマザキ  お前も見たろ、今朝俺と戦ってた奴だ。

山崎  知り合いなのか?

 

 

ヤマザキ  ああ、よく知ってるよ。…奴の名はシュドウ、

6次元天精霊シュドウ…俺の同僚だった奴だ…そして…

おそらくは俺にとって、最強の敵だ。

 

去るヤマザキ

 

山崎  え?…ちょっと、待てっておい!

 

去る二人

 

< 続く >

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