日本昔話出てくる。
日本 女は、思った。「いかれてるぞ、こいつら。やべーよ。こいつら。」
でも、ここで、彼らに自分の本心をぶつけるわけにはいかなかった。
地蔵1 ウノやろ。ウノやろ。
地蔵2 3人じゃきびしくない。
日本 「やばい、こいつらわけわかんない。」と女は思った。
もうすぐ、男が来る。今日は久しぶりに、男と、あん、一夜を過ごせるのに。
これはもう、すぐに帰ってもらうしかない、そう思ったそうじゃ。
でも、怒らせたら、もっと訳わかんない。また、念仏唱えたり、
すごい音を出されたら困る。
そこで、女は、明るく聞いてみたそうじゃ。
女 ねえ、あなたたち、いつ帰るの。
地蔵3 帰って欲しいの。
女 えっ。
地蔵1 大丈夫だよ。心配しなくても。
地蔵2 ああ。
女 何が?
地蔵1 僕たちは石だ。
地蔵3 石よね。
地蔵2 ああ。
地蔵1 しかも地蔵だ。
地蔵3 うん。
地蔵1 隣で君たちが何をやろうが、こうやって黙ってウノやってるだけだから。
地蔵3 心配しないで。
女 してないの。
地蔵1 でも、一応ね。
地蔵3 恩返ししないとね。
女 恩返し?
地蔵2 だって、この米俵いらないんだろ。
地蔵1 せっかく持ってきたのにね。
地蔵3 重かったもんね。
地蔵1 このままじゃ帰れないよな。
地蔵3 筋が通らないよね。
地蔵2 だから、君の役に立つことができるまで、僕たちはここでウノやってるんだ。
地蔵3 ふふ。
地蔵2 はは。
地蔵1 ほほ。
間。
女 だったら、帰ってよ。
地蔵達 えー。
地蔵1 何でー。
女 はっきりいって邪魔なのよ。
地蔵達 うそー。
地蔵2 どうしてー。
女 もうすぐ私の彼が来るの。あなた達がいると困るの。私に恩返ししたいなら、
帰ってちょうだい。それが一番の恩返しなの。
地蔵3 じゃあ何。この米俵また持って帰れっていうの。
地蔵1 重てーよ。
地蔵2 やってらんねーよ。
地蔵達、「やってらんねーよ」といいながら、ごろごろと転げ回る。
壁にぶつかったり、お互いぶつかったりしてガキンガキン。
女 やめてー、音ださないでー。わかった。わかったから。
地蔵2 何がわかったんだよ。
女 わかったわよ。
地蔵1 俺たちのハートがか。
女 米俵はおいていきなさいよ。それでいいじゃない。
地蔵3 それでいいの。
女 持って帰るの大変なんでしょ。なら置いてけばいいじゃない。
地蔵2 さっきいらないって言ったじゃない。
地蔵1 そう言ったじゃない。
地蔵3 どういうことよ。
女 だから、もらってあげるって言ってるのよ。
地蔵1 もらってあげるって何だよ。
地蔵3 何よ。
地蔵2 やってられるかよー。
地蔵達「やってらんねーよ」と言いながら、ごろごろと転げ回る。
壁にぶつかったり、お互いぶつかったりして、ガキンガキン。
女 やめてー。やめてー。お願いもーやめてー。
ピンポーン。
女 あっ、はい。
女、出て行く。
地蔵達、玄関の方をのぞきこむ。
女 …あっ、もー、うん。いいよ。あがって…もー遅かったじゃ…。
女、地蔵達と目が合う。
女、あわてて振り返り。
女 ああ、見ないで、じゃなくて、見て見て、じゃなくて、これ、地蔵なの。
うん。本物。そう。そうなの。私が運んだの。そう、一人で。
うん。もう重くて、肩脱臼しちゃったのよ。あっ、まだあがらないで。
部屋散らかってるし、あー、そうだ。ちょっと買ってきて欲しいものがあるの。
うん。えっ、だってー、今日久しぶりに泊まってくんでしょー。
ちゃんと準備してある?だからー、準備。そう、…うん。
…ごめん、下のコンビニで買ってきて。…うん。じゃあ、お布団しいて、
待ってるから。…。
バタン。
女、戻ってくる。
地蔵達 …。
女、頭を下げる。
女 お願い、帰ってください。
地蔵達 …。
女 私たち、今夜が久しぶりなんです。
地蔵達 …。
女 彼、高校の教師で、演劇部の顧問なんです。いつも忙しくて、
滅多に会ってくれなくて、今夜は本当に久々なんです。
彼と久しぶりに、一晩一緒にすごせるんです。
地蔵2 僕たちは邪魔なの。
女 いささか、邪魔です。
地蔵3 私たちは石よ。
女 でもなんかいやです。
地蔵1 僕たち地蔵だよ。安産の。
女 すこぶるいやです。
地蔵2 なんか手伝えることがあったら、手伝うよー。
地蔵達 よー。
女 帰ってー。
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