真二: 僕は将来どうなりますか?
時渦: …それを教えてあげるわけにはいかないわ。
これから起きることは、すべて偶然。
起きてしまったことは、すべて必然。
私には、あなたの未来が少しだけわかる。
でもそれは決していいことではないわ。
先のことがわからなくて悩むことができるのは、
あなたの特権…大切にすべきものよ…
男: 妹尾…真二さん…ですね。
男:
あなたがどれだけ時渦のことを想おうと、
あなたと時渦が恋愛をすることは不可能だ。
恋で始まり、愛まで高まるものをして恋愛という。
だが、あなたと時渦とでは、世界が違う。
恋をすることはできても…相手のことを想うことはできても、
互いに愛し合うことは不可能だ。
…ずっと恋焦がれたままでいるということは、
身を焼かれ続けることと同じだ。
私はそれを知っているから…ただ、見ているのが辛い。
時渦:
今日の私を見て、
あなたは無神経な女だと思うかもしれませんね。
そういう私と付き合うことは、とてもつらいことでしょう。
でも、それと同じ苦しみを、
私もこれから味わうのだろうと思います。
苦しいでしょうね。もどかしいでしょうね。
それでも、なんでもない振りをつらぬいてくれたあなたを、
私は私自身の意志で愛し続けようと思います。
何年でも、何十年でも、
あなたがどんどん若く、小さくなって、
やがてあなたがたった一つの細胞に戻るまで、
あなたを愛し続けようと思います。
時渦: …泣いてるの?
真二: …夢だよ。昔の夢をみた。…ただそれだけのことだ。
男: あなた…浩江でしょう?
浩江: ええ。菅浩江と言いますが…
男、おもむろにページを数ページ破り取る。
男: いつか返す!
今は知り過ぎない方がいい。でも、必ず返す。
浩江: 待って!
***
浩江: 後から降った雨に先にぬれていた…まさか…。
真二:
僕と彼女が、…互いに満たされることはないんだよ。
永久に。
僕達は、お互いにとって、ただの物理現象でしかないんだ。
これが本当に自分の意思なのか、
それとも、時の渦に飲み込まれただけなのか…
もう僕にはわからないんだよ…
浩江:
だから…逃げてこられたんですか?
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