真二:
僕達は、ただ毎日、その瞬間を生きることしかできない。
そういう刹那の間しか、心を通わせることができない。
それは時にはとてもつらいことだ。
それでも…君はこの家に来るか?
時渦:
…たとえ、この気持ちが、片思いと呼ばれるもので、
それは愛じゃないのだとしても、
私はあなたに片思いし続けるわ。
目が覚める度に、あなたは昨日のあなたになって、
私との思い出を何一つなくしたとしても、
私は…あなたに毎日ひとめぼれしてみせる。
私は…そんな風にあなたのことを思いたい。
何年でも、何十年でも、
あなたがたった一つの細胞に戻ってしまうまで…
時渦: お休みなさい。
真二: …さよなら。
時渦: え?
真二: いや、…「お休み」。
真二: 時渦…。
時渦: 私は将来どうなりますか?
どうやって生きていけばいいんですか?
真二: それを教えてあげるわけにはいかない。
これから起きることはすべて偶然。
起きてしまったことはすべて必然。
…私には君の未来が少しだけわかる。
しかし、それは決していいことだとは言えない。
今はただ、じっと耐えるんだ…
真二: 時渦…だね。
時渦: おじさん、だあれ?
真二: …いずれ、わかるさ…
***
真二: …時計を持っているかい?
…じゃあ、これをあげよう。
本当は新しく作り変えたかったんだけど、
…間に合わなかった。
これはね、…時渦と、
時渦がこれからめぐりあう誰かとを結ぶ絆になるんだよ。
もらってくれないか?
時渦: 誰かって…誰?
真二: 私だ。
君は私に会う…私はもう…君には会えないけれど…
***
時渦: おじさん、泣いてるの?何がそんなに悲しいの?
真二: …そうだね。悲しいことなんか何もない。
…君と私は…必ず、めぐりあうのだから。
時渦: おじさん。
真二: ?
時渦: またね。
真二: …ああ。
真二: 時渦は…幸せだったろうか。
男: それは、これから決まることですよ。
私達にとっては。
そして何より…その答えは、
あなたが一番よく知っているはずだ。
ゆっくりと目を閉じる真二。
そして…
いつまでも、枯葉を巻いて、くるくると回る渦のように。
延々と繰り返される、物語…。
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