◆10/30 本番こうでした ラストまで

 

居間を囲っていた壁を破って、岐阜市民たちがなだれこむ。

と、屋敷はこがねもち神社の境内にしつらえられた、
特設舞台であったことがわかる。
早くよい席を確保しようと駆け回る市民たち。

もうめちゃくちゃな大騒ぎ!

乳母  「てめえらっ!黙れって言ってるのが聞こえねえのかあっ!」

記者会見の準備が進められる。

奇夜比由烈徒一家とその関係者、音楽と共に記者会見の席につく。

 

神主

 「ここにおられるみなさんがどんな思いで、
 この瞬間を待っていたことか!
 この町は、いまや悲劇の都です!」

にぎやかな囃子と共に、ところせましと盆踊り。

と、境内の一角から大きな声。

男 「出て来い!奇夜比由烈徒!どこに隠れた!」

ファンファーレと共に、バルコニーに姿を現したのは、
ハデな衣装をつけた、配達アルバイト。

市民たちは感極まってひれ伏しぬ。

 

男 「何だこの騒ぎは。まだ俺を笑いものにしようってのか?」

奇夜氏

「とうとう来てしまいました。来るところまで。
かまうことはない。やっちまえ!」

ゴング!

 

うなぎや  「どっちが勝つのかしら?」

神主  「もちろんきまっとる。台本通りじゃ。」

そこへ樹里絵津徒が駆け込む。

 

樹里絵津徒 「やめなよ!なにやってんのよ、この騒ぎ。」

乳母 「お嬢様、出番をお間違えです。まだ早うございますよ。」

樹里絵津徒 

「岩田さん、悪いけど、あたしもう、
 樹里絵津徒を続ける気なんかないの。」

奇夜氏 

 「私たちは助け合っているんだよ。
 お互い協力して、人生を盛り上げようとしているんじゃないか。
 君だって、私たちの仲間なんだよ。」

樹里絵津徒  「違う。あたしが待っていたのは…」

丁穂留徒  「そこをどくんだ。俺たちはどうしてもこいつをやらなきゃならないんだ。」

男  「俺もさ。だってどうせ、何もかもが芝居なんだろう。」

葉里巣 「今度は俺が相手だ」

葉里巣、男にとびかかるが、間に割って入った樹里絵津徒を刺してしまう。

奇夜夫人 「川瀬さん!」

…死にそうな朝、目が覚めると、
鏡の中に色とりどりの仮面が積み上げられていました。

あまり晴れやかな景色なので、
あたしが「うらやましいわ」と皮肉をいうと、
仮面たちは不思議そうな顔をして
「君はまだ気がつかないの?」と言うのです。…

 

男 

 「おい、どうしたんだ?これは芝居だろ?
 冗談きついよ、寝たふりはよしてくれよ…」

「でも、もう駄目だよ。もうとまらない。
 もうどうしたらいいのかわからない。」

「俺はただほんの少し遊びたかっただけなんだ。
 逃げるんだ路美男!俺はお前をひきちぎる!」

男  「近寄るな!こっちにくるな!」

「殺せ!」

男  「近寄るなあっ!」

男  「こんなのってありか…こんなのって…」

アルバイト、死す。

一同、糸が切れた人形のように、くずれて動かない。

アルバイトをのぞいて、一同次々に起き上がる。

芽怒絵津徒 

「あなた、いつまで寝てんのよ。もう終わったのよ。
これからが楽しいんじゃないの。」

アルバイトだけが、横たわる。

 

そして、カーテンコール。

アルバイトも列に加わる。

そして、最後の一礼を終えたとたん、役者たち、人形化する。

オープニングと同じように、仮面をつけた黒子、それらを運び出す。

ふたたびそこは静かで暗い広場。

何もない場所。

 

また来週!

 

 

 

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第17回岐阜市民芸術祭 演劇の部
「ロミオとフリージアのある食卓」