みそじまでのひまつぶし企画
2007.8.29

本番こうでした その2


5.鈴子変身

 

田村   サマーキャンペーンのイメージガール、三ツ葉さんの知り合い女の子使うって

話だったじゃない。


川島   ああ、あの高校出たてピチピチギャルでしょ。

田村   急にさあ、体調が悪くなったとか、かんとかでさあ。これなくなっちゃったんだな。

川島   あちゃー。

宏美   あらまあ、キャンペンガールの後がまでしたら、私の方でたまたま

手配しておりました。これは運が良かったです。

全員   えー。

藤巻   ほんとうですか。

川島   かわいいですか。

三ツ葉   ぴちぴちですか。

宏美   もち、しかも、あなた方の身近な人です。

荒木   えっ、誰だよ。

宏美   エステ宏美提供!青木鈴子さん。どーぞー。

全員   えっ。

青木鈴子、登場。




田村   君、ほんとにあの青木さんかい。

鈴子   はい。

川島   かわいい。かわいいいいいいいっすよ。鈴子さん。

三ツ葉   んー、いつもさえない君がかわいく見えるのはどういうことだ。

荒木   かわいい。

鈴子   はい、ありがとうございます。

智華   (小声で)年増のくせに、どうやって、あそこまで化けたのかしら。

 

鈴子、男達に取り囲まれる。しどろもどろの鈴子。

 

宏美   どうでしょう彼女で。

藤巻   はい。いいです。とても。

鈴子   ・・・藤巻さん。

 

藤巻   さあ、さっそく。

鈴子   い、い、いらっしゃいまし。

藤巻   そこで笑う!

鈴子   いえーい。

藤巻   そんなこといわなくていいんだよ。

 

田村   鈴子ちゃん。この際はっきり言うけどね。君はのろまだよ。ぐすだよ。だめだよ。

藤巻   支店長!

田村   お前は黙ってろよ!

藤巻   なにがですか。

田村   いくら企画があって、いくらかわいいスタッフでも。のろいスタッフは邪魔なんだ。

現場はそんなに甘くない。

仰木(声)   はい、ただいまキャンペーン中でしてね、会員のみなさまには

すばらしい得点と、サービスがあります。どうです。

田村   しばらくあの子でいったら藤巻。スタイリストさん、あの子の服、

準備してあげてよ

宏美  はあ。まあ、いいですけど。

田村   やめる?うち。

鈴子   (首を振る)

田村   えらいな。厳しくいって悪かったな。

鈴子、走り去る。

 

川島走ってくる。



川島   鈴子さん、大丈夫かい。

鈴子   あ、え、はい。

川島   あのさあ、やめちゃうの。

鈴子   えっ。

川島   さっき、みてないけど、やめろとかなんとか、あの、支店長、

口ではああやって言うけど、全然そんなこと考えてないからさあ。

鈴子   はい、すいません。

川島   あ、あ、ごめん。そういうんじゃなくて、その、そう。そうやって、

めがねを取った方が絶対いいよ。うん、そっちの方が、好きだ。僕は。

鈴子   はい、すいません。

川島   もう、なんで、あやまる。あっ、なんか忙しそう。じゃあ、先いってるから、

そう、なんでもなかったみたいに。ね。

ドン、ドン、と空に花火の試し打ちがこだまする。

 

鈴子  …今年の花火もきれいなんだろうな。

砂鉄  そなた悩んでおるな。

鈴子  あなた誰。

砂鉄  わしは針師の砂鉄。人の心の病を治すのがわしの定めじゃ。

どうじゃわしとそなたであの男をものにするのじゃ。

鈴子  どうやって。

砂鉄  夜這いじゃ。

鈴子  そんな度胸…

 

砂鉄、針をぶす。

 

鈴子  できるかしら。

 

6.お見舞い

 

田村  おい、連絡のついでに聞いたんだが藤巻カゼなんだと。

智華  じゃあ私、お見舞いに行こうかな。

田村  おいおい、そんなことしたら藤巻の熱がさらにあがるぞ。

智華  そんな藤巻さんを刺激するようなことはしません。お見舞いするだけです。

 

ふたりとも去る。

 

 

砂鉄  そなたその格好でいくつもりか。

鈴子  え、まずいですか。

砂鉄  わかっておらぬな。見舞いが男にとってロマンになることを。

鈴子  男のロマン。

砂鉄  さよう、鈴子殿、これをはくのじゃ。

鈴子  これミニスカートじゃないですか。

砂鉄  彼はな、日がな一日こうやって天井ばかりみて暮らしておる。

そこへそなたのような女性が「大丈夫?」なんていって見舞いにくる。

「ありがとう」と彼が言う。「ちょっと待って、今おかゆつくってあげるから。」

そそくさと立つ彼女。そのとき彼は懐かしいものをみるのじゃ。ほわ。

ほれ、彼女が立ったとき、彼はほわっと見るのじゃよ。

鈴子  …。

砂鉄  さ、はきなさい。

鈴子  いやです。

智華  お見舞いに来ましたー。

藤巻  ごめんねわざわざ来てもらっちゃって。

智華  今おかゆ作りますから待っててくださいね。

 

智華、立つ。藤巻、見る。反応する。

 

砂鉄  …見たか。

鈴子  …見た。

砂鉄  …(渡す)

鈴子  …ブルマはいていいですか。

砂鉄  君、年いくつ。

鈴子  すいません。

砂鉄  ま、わしはそれも好みの範囲じゃが。

鈴子  すごい熱。何か薬は…。

智華  じゃーん。

鈴子  え。

智華  座薬よ。

鈴子  何。

智華  私が入れるの。

鈴子  …。

智華  あなたにこんな度胸ある。

鈴子  …。

智華  私と藤巻さんは今日から座薬の仲よ。

鈴子  ガキが何言ってるのよ。

智華  何。

鈴子  それをこっちによこしな。

智華  え。

鈴子  藤巻さんに座薬を入れるのは私よ。

 

砂鉄、智華へ鍼を刺す。

 

砂鉄  手ごたえアリ。三分間意識を失うツボ。

鈴子  私、全然恥ずかしくなかった。

砂鉄  そなたは今羞恥心消滅のツボをおさえてある。

鈴子  女として間違ってるね。

砂鉄  さあ、入れなさい鈴子殿。

 

鈴子、布団の中に手をつっこみ、ズボン、パンツをぬがしていく。

 

 

 

藤巻、気づく。

 

藤巻  ちょっと何!

鈴子  え?

智華  こわいですね。29になって男の人がいないと、

やることなすこと見境なくなっちゃうんですね。

藤巻  29?

智華  昭和53年8月29日生まれ。鈴子さんのお財布借りたとき、

レンタルカードの裏見ちゃったんです私。

鈴子  あの、私。

智華  私、そういうふうにはなりたくありません。

 

鈴子、走り去る。

 

砂鉄  今日のこと忘れさせてやろうか、記憶喪失のツボで。

鈴子  もういい。

砂鉄  …。

鈴子  私、年には勝てない。

 

 

<本番3へ続く→>

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