みそじまでのひまつぶし企画
2007.9.1

本番こうでした

 

タンクローリーの爆音。

智華、タンクローリーを運転している。助手席の外側にしがみつく藤巻。
ハンドルを取ろうとしている。

 

藤巻   やめるんだ。智華ちゃん。

智華   ほっといてよー。

藤巻   あぶなーい。

鈴子   なんで、智華ちゃんと藤巻さんが、

砂鉄   拙者があの娘の動きを封ずる。

 

砂鉄走り出す。

 

鈴子   砂鉄さん。

砂鉄   うおおおおおおおお。

藤巻   智華ちゃんやめるんだ。

 

藤巻は助手席に入り込む。
砂鉄疾走、隣に並ぶ。吹き矢構える。

 

砂鉄   3分間意識を失うツボ。発射!

 

気絶するのは藤巻。

 

砂鉄   いかーん。はずしてしまった〜。

鈴子   藤巻さん。藤巻さん。・・・・・・智香ちゃん。車止めよ。智華ちゃん!。

智華   どっから乗ってきたの!

鈴子   車止めよ。ね、止めよ。お願い。止めよ!

 

鈴子、藤巻越しにハンドルにさわる。

 

智華   さわらないでよ。

鈴子   藤巻さんがどうなってもいいの。

智華   それがどうだってのよ。

鈴子   だめー。

 

鈴子ハンドルの主導権を握ろうとする。智華、平手打ち。

智華   かっこつけないでよ。

鈴子   ・・・・・・  

智華   点数稼いでるだけじゃない。あとで藤巻さんに

「助けてくれてありがとう」とでも言ってもらうつもり?

鈴子   ・・・・・・  

智華   藤巻さんと面と向かってあなた何もできないでしょ。

待ってるだけだから、その歳 で男が1人もできないのよ。

鈴子   ・・・・・・  

智華   かわいそうな女。

 

鈴子、平手打ち。

 

鈴子   あなたにいわれる筋合いなんかない。

智華  ・・・・・・  

鈴子   私は本気なの。

 

田村   この責任はわたしにある。

鈴子   支店長。

田村   藤巻、君を死なせはしない。

鈴子   支店長、どいてください。

田村   止まれ。

鈴子   ダメ。死んじゃう。

鈴子   スピンしてる!

宏美   落ちる!るー。るー。

 

時間の流れがゆっくりになる。

 

鈴子   その時、わたしは思った。死ぬんだなって。

宏美   うっきょー。

鈴子   ローリーは大きく反転した。藤巻さんがわたしに寄りかかった。

私はこんな時にも関わらず、心臓がきゅーんとなった。  

宏美   きゅーん。

鈴子   視界の隅で、宏美さんが飛んでいく。わたしのせいなんだ。

ごめんなさい。私最後の最後まで、迷惑かけどうおしで。

宏美   わー。

 

鈴子   うしろでは、10万リットルのガソリンがちゃぷちゃぶとなっている。

このガソリンがわたしと藤巻さんをあの夜空に吹き飛ばしてくれるだろうか。

毎年咲く、花火のきれいなあの夜空まで。

今夜のために、私生きていたんだろうか。

藤巻   (気づく)鈴子ちゃん。

鈴子   えっ。

鈴子   ・・・・・・わたし、藤巻さんのことが好き。

藤巻   えっ。

鈴子   言っちゃった。

砂鉄   南無三。

 

ブシュ。バン。

 

藤巻   危ない!

 

パンク音。転倒する音。そして。爆発音。

 

もうもうとした、炎の中。

藤巻が、鈴子を抱きかかえて、歩いて来る。

 

 

鈴子   ・・・・・・好きです。

藤巻   ・・・・・・  

鈴子   この歳になって初めてなんです。こんなこというの。

藤巻   ・・・・・・

 

鈴子、去ろうとする。

 

藤巻   ・・・・・・待って。

 

鈴子、立ち止まる。

 

藤巻   僕も、君に言わなきゃいけないことがあります。

鈴子  ・・・・・・はい・・・・・・。

藤巻   あの・・・・・・

鈴子   ・・・・・・はい・・・・・・

藤巻   僕、

鈴子   ・・・・  

藤巻   男の人じゃないとだめなんです。

鈴子   ・・・・・・えっ。

 

時間が止まる。

 

鈴子   えっ。

藤巻   愛する人の足音が聞こえる。

田村   おーい。

 

田村、息を切らせながら走ってくる。

見つめ合う、藤巻と田村。

思わず、抱き合う藤巻と田村。

花火の光と音が静かに響く。ドドン。ドドン。パン。パン。パラパラパラパラ。

 

鈴子   ねえ、宏美さん。口紅かしてください。

宏美   えっ。

鈴子   なんか、落ちちゃったみたいだから・・・・・・一番赤い奴・・・・・・

 

宏美渡す。口紅を塗る鈴子。

 

鈴子   絶対いい男、捕まえてやる。・・・・・・手伝ってくれる。

 

うなづく2人。

 

宏美   これからどうする。

鈴子   とりあえず、あの男の後ろから跳び蹴りを食らわす。

砂鉄   おーけー。

鈴子   いくよ。

 

スターマイン。鈴子の助走が始まった。

 

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