公演後のひまつぶし企画
<舞台こんな感じ その2>   2012.11.28

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女 「ねぇ。でも、なんで、「秘密の部屋」はここにあるのに、「賢者の石」はあっちにあるわけよ。
  まとめておいたら?」

司書 「えっと・・・わけあって、このように並べてあるんです。」

女 「ふぅん。・・・続きある?」

司書 「続き?というと「アズカバンの囚人」ですか?」

女 「だっけ?忘れちゃった。いや、「今まで読んだ本の続き」なら、1冊だけでもいいかなって」。

司書、ちょっと探すと・・・。

司書 「はい。こちらでよろしいですか?」

女 「!・・・さすがに「司書 」ね。こんなにばらばらな本棚からでも探せるんだ。
   それとも、何か特別な分類がしてあるの?」

司書 「ええ、まぁ・・・。」


***


女 「これ…私の、だ。」

司書 「…。」

女 「これ、私の、よね。だって、線が引いてあるもの。ほら、ここ。それに…。
   やっぱそうだ。ほら、ここに書き込みがある。これ、私の字だ。」

館長  「…。」

女 「なんで…どうして、私の本が、図書館にあるの?」

司書 「その本だけですか?」


女、改めて本棚を見渡す。


副館長  「「レベル7」、「銀河鉄道の夜」、「もしドラ」、「燃えよ剣」、
       「ハリーポッターシリーズ」は3巻までで、 予約しなかった4巻からはなく、
       ベルばらは途中まで…。」

女 「…もしかして…。」

館長 「もうお分かりでしょう?」

女 「ここにある本…私、全部読んだことがある。
   …っていうか、私が読んだことがある本しかない!」




***

司書 「・・・一冊です。」

女 「?」

司書 「あなたに借りられたがっている本が、この中に一冊あるのです。」

女 「私に?」

司書 「その一冊を見つけてあげて欲しいのです」。

女 「「あげて欲しい」って・・・「本のために」ってこと?」

司書 「(首を振って否定)…これは、きっと覚えておいて下さい。いいですか?」

女 「(勢いに押されて)…はい。」

司書 「あなたは、…」

女 「…。」

司書 「…あなたが読んだ本でできている。」

女 「…は?」

司書 「あなた」という人格は、あなたがこれまでに出会い、
    読んできた数多の本によって形作られているのです。

女 「・・・。」

司書 「今の、この散らかっている本棚は、あなたの記憶が混乱している様子を表しています。
    これは、けして歓迎すべき事態ではありません。
    私も、この本達が、本棚に整頓されることを望みます。
    でも、本棚が散らかっている今だからこそ、忘れている本のことを思い出すチャンスでもあるのです。」


司書 、真面目な顔で、女 にうったえる。


司書 「見つけてあげて下さい。本棚を整頓しきってしまう前に。
    あなたにとって大切な、ただ一冊の本を。」

女 「一冊・・・。」


女、散らかった本を前に途方に暮れる。
女を見つめる、強い司書 の視線。


女 「・・・分かったわよ・・・見つければいいんでしょ?」

司書 「・・・(無言で笑顔)」




女 「何で・・・同じタイトルの本ですら、分けておく必要があるんだろう。」

司書 「・・・。」

女 「赤毛のアン・・・読んだ気はする。絵本と、青い鳥文庫と、文庫版・・・。」

司書 「・・・。」

女 「読んだ順・・・?」

司書 「!」

女 「そうか・・・分かった。読んだ順だ。
   絵本と、青い鳥文庫と、文庫版。こっちに行くほど小さい子向けで、こっちに行くほど大人向け。
   このへん・・・この頃、私、コバルト文庫にはまってたんだ。だから固めておいてあるんだ。
   でも、ハリーポッターみたいに新刊が出るのを待って買った本は、どうしても間があくのよ。
   だから少し離れておいてある。そうでしょう。」




司書 「本って・・・何だと思います?」

女 「何って・・・本は本でしょ。活字や絵が描いてあって・・・こう、ストーリーが分かるものよ。」

司書 「では、本は記憶媒体でしょうか。」

女 「・・・どういうこと?」

司書 「数多の作者が考えたストーリーを伝達する手段が「本」・・・
    同じ活字や絵が載っていれば、同じ本とみなすことができるのなら、
    本の形には意味がありませんね。」

女 「・・・。」

司書 「どうして、同じ「赤毛のアン」を何冊も持っているのでしょう?
    文庫版と新書版では、別のストーリーなのでしょうか?
    いいえ。モンゴメリの原作自体が違うわけではないはずです。
    では、なぜ、あなたは同じストーリーの本を、何冊も持つ必要があったのでしょう?」

女 「・・・なくしたから?」

司書 「・・・先ほど、「ガラスの仮面」の話をされましたよね」

女 「・・・。」

司書 「実は、ここにもあります。文庫版で。
    あなたは、すでに持っているのに、わざわざお金を払って買い直しているのです。」

女 「それは・・・何ていうか、コレクションってほどじゃないけど、装丁がちがうし・・・それに・・・。」

司書 「それに?」

女 「・・・人に・・・貸したくなった・・・。」

司書 「・・・。」


女 「そうだ・・・私、本を人に貸したり、誰かから借りたりするの、好きだった。」

司書 「誰に?」

女 「誰に」?

司書 「ね・・・「本」は・・・「ストーリー」でしょうか?」


長い間。


女 「・・・この本・・・赤毛のアン(文庫版)は・・・。 そうだ。ミュージカルを見た・・・。
    それで、原作を読み返したくなって、買った。
    私、この本、前はあんまり面白いと思えなかった。アンはがさつで、
    うっとうしい子だとしか思えなかった。だって・・・そうだ・・・だって、
    前は・・・そう、前の時は、読書感想文を書くために、あわてて読んでたから。
    でも、こっちは違う。読みたくなって、劇場からの帰り道に、三洋堂で買った本。
    だって・・・だって、結婚してから初めて見に行ったミュージカルだったから。」

司書 「・・・。」

女 「違う。「本」は「ストーリー」じゃない。本は「本そのもの」に意味がある。」

司書 「!(笑顔)」








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