劇団あとの祭り Vol.5

「TheEND(エンドマーク)は降って来る」

作/福冨英玄

<6 支配者>

 

ハルコ、電話ボックスに入る。どこかの公園。

 

ハルコ  …もしもし?私。寝てた?ゴメンね、起こして。

でも間に合ったでしょ締め切り。そりゃそうよ。

なんたって私が手伝ってあげたんだからさ。

感謝しなさいよ。…うん・・・実はさ、ちょっとワケありで

家に帰りたくないのよ。2、3日、ううん今夜だけでも

いいから泊めてくれないかな。…そういわずにさ…

なんならまた手伝うから。それとも今忙しいとか?

なんなら私雇わない?夕御飯だけて手を打つからさ…

え…そう…そうなの…あ?いいよ別に…うん…うん…

気にしないで…うん…じゃ。

 

切る。

 

ハルコ …まいったなーここもだめか。他に頼めそうなところないしな。

…そうだ!山崎さん!山崎さんに頼んで、

仮眠室貸してもらおう!

 

再び電話をかける。

 

ハルコ  もしもし!あの私野村…いえ……なんでもありません…

番号間違えちゃって…はは…すいません。

 

切る。

 

ハルコ …そっか…私はもう漫画家じゃないんだっけ…。

 

デウス、探知機を持って登場。うろうろしている。

どうも探知機がハルコを示しているらしい。

 

デウス おかしいな…ええい…これでは私が変質者のようではないか!

 

ハルコ、ボックスを出る。

 

ハルコ デウス!

デウス え?

ハルコ カイザーデウスじゃない。…そっか、あんたも出てきたんだ。

デウス 何?私を知っているのか?地球人にしては上出来だ。

よし、お前は殺さずにおいてやる。一生私の奴隷として…。

 

ばしっ!

 

デウス 痛いではないか。無礼者。

ハルコ どっちが無礼よ。

デウス 私はカイザーだそ。

ハルコ それがどうしたってのよ。

デウス だから…私は地球の支配者なのだ。

ハルコ 私はあんたの世界の支配者よ。

デウス 何?

ハルコ あんたの地位も、あんたの帝国も、あんたの力も、

あんたの戦艦も、みーんな私が作ってあげたの。だって…。

デウス まさか、私のいた世界はお前の作った物語の中にあるから…

とかいうんじゃないだろうな?

ハルコ あら…えらく察しがいいじゃない。

 

デウス、ショックを受けた様子。

 

ハルコ どうしたの。

デウス そうじゃないかとは思っていたが、まさか本当だったとは…。

ハルコ じゃ、昔から気づいてたの?

デウス 当たり前だ!普通は気づくぞ!おかしいと思ったんだ。

何で地球侵略をもくろむ者が日本しか狙っては

いかんのだ?アメリカなりヨーロッパなり狙えばいいものを、

何が悲しくてこんな島国狙わにゃならん!

おまけに一斉攻撃すりゃいいものを一度に一体しか

怪人を送れんし、「お、今回はいい線いったぞ」っていう

怪人が出てきても、二度と同じ怪人を作れんし、

極めつけがあれだ。

 

デウス、プラズマンの変身ポーズと名乗りをやる。

 

デウス 何でこの間に攻撃してはいかんのだ?

あんな目立つ位置にでてきているのに!不条理だ。

まったくもって不条理極まる。

ハルコ あははははっははははは!

デウス 笑うな!

ハルコ ごめんごめん。

デウス …まったく、お前が女でなければぶち殺してやるところだ。

ハルコ 結構フェミニストだったのね。

デウス …カイザーだからな。

 

間。

 

ハルコ ごめんね。

デウス ん?

ハルコ 不条理なことさせちゃってさ。最終回も書いてあげられなかったし。

デウス ん?いや…まあ…。

 

間。

 

ハルコ あのさ。

デウス ?

ハルコ 今、ヒマ?

デウス 全然ヒマじゃない。

ハルコ  まあそう言わずに。

 

ハルコ、デウスを無理やり引っ張っていく。

<続く>

<前へ>

 


GEKIDAN ATONOMATSURI SINCE 1991