劇団あとの祭り Vol.7

「BYPLAYERは死なない」

作/福冨英玄

<5 仕事>

 

 

山崎、くっそーって感じ

ヤマザキはすましている

 

ヤマザキ  …しかし、お前が小説雑誌の編集者とはね。

山崎  …悪かったな、ガラじゃなくて。

ヤマザキ  ほめたつもりなんだがな。なるの難しいんだろ?

山崎  つまんないこと知ってるじゃないか。宇宙人のくせに。

ヤマザキ  5次元精霊だ。どこに耳つけてんだお前は。

ハルコ  ここと、ここ…

山崎・ヤマザキ  !

ハルコ  …で、どうかな?

山崎  …何が?

ハルコ  何がって…挿絵入れるとこ。安直だとは思うけど、

やっぱはずせないと思うんだ。

 

山崎、黙って受け取る

ヤマザキ、横からのぞき込む

 

ヤマザキ  …いいんじゃない?見せ場だし。

山崎  勝手なこと言うなよ!

 

周囲の目

引っ込む山崎

 

ハルコ  大丈夫?

山崎・ヤマザキ  全然大丈夫。

ハルコ  ならいいけど。…でもさ、仕事まわしてもらっといて何だけど、

正直いって、あんまよくないよ、それ。

ヤマザキ  俺もそう思う。

ハルコ  形だけ真似しましたって感じでさ。燃えないんだよね。

ヤマザキ  どうせ廃刊寸前だからね。ダメで元々なんだ。

山崎  おい!

ハルコ  …何、また廃刊になりそうなの?

ヤマザキ  うちの出版量なんて、大手出版社に比べたら誤差みたいなもんだからね。

ハルコ  小説に移っても苦労してんだね。

ヤマザキ  小説ったってSFだもの。マンガの字だけの奴だよ。

山崎  勝手に返事するなってのに!

ヤマザキ  事実だろ?代弁してやっただけじゃん。

山崎  大きなお世話だ!

 

山崎、視線をハルコにもどすと、ハルコ、奇妙な目で、

ヤマザキ、山崎を見ている

 

ハルコ  …どうしたの?さっきから。

山崎  何でもない。

ハルコ  …で、どうかな。(挿絵を入れるところの話)

山崎  どうかなって…ああ、うん、いい…と思う。

ハルコ  そう。…じゃ、夕方までにはあげとくから、取りに来てよ。

山崎  悪いね。急に頼んで。

ハルコ  何いってんの。私と山崎さんの仲じゃない。

 

かばんを持って立つハルコ

 

ハルコ  じゃ、また。

山崎  ああ。

ハルコ  あ、それから、余計なことだけど、疲れてんなら休んだ方がいいよ。

山崎  体力勝負ってね。

ハルコ  じゃ、お仕事がんばってね。

 

去るハルコ

 

山崎  …がんばってね、か。…待てよ、冗談じゃない。仕事ができちゃったじゃないか!

ヤマザキ  なんだよ、いきなり。

山崎  どうしてくれるんだよ。死んでも後腐れないようにと思って、

せっかく昨日、仕事に区切りつけたのに!

ヤマザキ  よかったな、生きる目標が見つかって。

山崎  くっそー、こんな仕事、ダッシュで片付けてやる。

 

去る山崎

 

ヤマザキ  おい…待てって、いいのかよ、金払わなくて!

 

 

< 続く >

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